恋連鎖 | ナノ


…しばらくして、卓球の後半戦も終わった。



勿論、あたしたちの目の前にいるトシ&さっちゃんさんペアは圧勝して、他のチームも負けたところとかもあったけれど合計得点で3Zの勝ちと言う事が決定した。


「よし、まずは形成を整えたな。…次は……バレーボールなら心配するこたァねぇか」

「ねぇ先生」

「何だ?」

「これ勝ったら何かあるの?」

「ん? …あーまぁな」

「??」

あれ、どこか紛らわしい言い方でごまかさなかった?

…まいっか。


「それじゃあ結ちゃん、早く体育館に向かおう」

「え、あ、うん!」


九ちゃんは、そんなに早く妙ちゃんに会いたいのか、と思わせるくらい、いつもよりも数倍輝かしい瞳をあたしに向けて走り出す。
ちなみに柔道場と体育館は同じ建物にあるからそのまま走ればすぐだ。

―――こうして見ると、本当に恋してるんだなー…

いつも男の子らしくふるまっていて誠実な雰囲気を纏っているから正直気軽に話せなかったりするけれど、何だかこういう九ちゃんを見ちゃうと一気に親近感を覚える。


「そういえば近藤さん大丈夫かな」


九兵衛に腕を引かれながら結が静かに呟く。



ちなみに近藤はと言うと、未だに保健室で白目を天井に向けながら気を失っていた。

「コイツ死んでんじゃねーのか?」

コーヒーを飲みながら苦笑を浮かべて高杉が呟いた。



***




バンッ、バシンッ


「はぁぁあああっ!」


ボールが床から跳ねる音、誰かに叩かれる音が体育館中に響いてそれはそれで怖い。

「ふぉちゃあぁっぁぁ!」

バシィーン!!


「あれ、さっきの光景とでじゃぶったんですけど…」

「ホラ、すごいだろ?」

「う、うん」

やっぱり九ちゃんの目が輝いてるや。


「ほぁっちゃぁぁぁ!! …………よし、姉御っそろそろ一休みするアル!」

「そうねぇ。あら」

妙ちゃんが汗を拭きとっていると、どうやらあたし達の姿を確認したらしく手を振ってくれる。

「結!!」

「お疲れ神楽ちゃん」

いつものように神楽ちゃんが突進してきて、なんとかそれを受け止めたあたしはよろけながらも神楽ちゃんをキュッと抱きしめた。

「卓球はどうだった?」

と妙ちゃんが尋ねると、九ちゃんが

「勿論圧勝だったよ!」

と、何故か我が物顔で答える。そんな九ちゃんを見た妙ちゃんは「すごいわ」なんていうものだからますます九ちゃんが目を輝かせる。
―――可愛いな…

「どうしたノ? 結ー」

「え、何でもないよー。……ってか神楽ちゃん、降りて」

「えー私疲れてるネ。ちょっとくらいいいでショ?」

「………」

そんな甘えたようにお願いするものだから、「……ちょっとだけね」と笑って返す。


「でもとりあえず座らせて」

「いいヨ! 私結の膝に座るアルから」

「はいはい」


選手が控えるベンチに座ると神楽ちゃんがピョンっと膝の上に座る。いきなりドスッと来たものだから一回「うっ」と唸ってしまった。

まぁ、控えのベンチと言っても観客席と変わらない。簡単にいえばそのチームのクラスの観客席=選手の控え席って感じ。
とりあえずあたしはこの場所を取らせてもらった。

「結ーそこのポカリとってヨ」

「これ?」

「おう!」

本当に子供みたいにあたしの膝の上でポカリを受け取るとごきゅごきゅと音を鳴らせて飲む。

ぷっはーとオヤジ臭く飲み終わると

「あらあら神楽ちゃんいいわねー」

と妙ちゃんと九ちゃんがこちらを見た。

「いいでしょ! 私だけの特等席アル。誰にも渡さないヨ」

そうしてギュっとあたしの首に腕をまわす。妙ちゃんはまるで神楽ちゃんの母親みたいに
「ごめんなさいね神楽ちゃんが」
なんていうものだから、思わずクスリと笑ってしまった。



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