恋連鎖 | ナノ



「…―――――ふーん…」


―――やっぱり先生も結の事好きだったんだぁ…


笑っているのかそうでないのか、それは本人にしか分からない。
そんな笑顔を浮かべ、神威は屋上から、校舎から出てきた二人を見つけて眺めていた。

実際自分も彼女の事を好きだというのに、何故だろう。不思議と嫉妬という思念は抱かなかった。
ただ、彼の中にあるのは『何かおもしろそうな物を見つけた』という感情であって、それほど神威自身の感情そのものを動かすものではない。


つまりこういう事。

『自分も彼女が好き。けれども自分の物にしようとは思わない』

一目惚れとはよく言ったものだ。
結局はこの程度。

しかし、“まだ”この程度。とも言える。

感情とは面白いもので、それを持っている本人たちにさえ、未来を予測できない。
いくらその場で決意しようが、それが遂行されるのは何年も後だったり。
はたまたそのまま消え去っていったり。

最終的には自分自身のその場の判断であるのだが。


…神威は思った。

もしかしたらまだ自分は、この感情に対してまだまだ未熟だから、何も分かっていないのかもしれない。

ただ、今はまだ独占欲というものがないだけかもしれない…と。

けれども遠目からその二人の様子を見て、どこか刺々しいものが心を突付くような様子に陥った。

あぁ、あれだ。

結の笑顔を見たから。



…まぁ、これだけだったら逆に自分自身嬉しくなっていくのかもしれないけれど、今回は違う。

その笑顔の矛先が、自分じゃなくて銀八だという事。




―――なんだ、俺にもちゃんと、嫉妬っていう感情があるんじゃん。




すると神威は自嘲気味に笑う。
彼らの姿が見えなくなっていくと、神威はそのまま屋上に寝そべって、純粋とは言えないオレンジの空を眺めた。

実際、その目には何も写っていない。


「つまんないなー」


どこにあるか知れない夕日に向かって、ポツリと呟いた。







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