恋連鎖 | ナノ
ザワついている教室の中、ただ倒れているだけなのに神楽ちゃんが
「死んじゃだめヨ結―――!!」
って叫んでいる。
まぁ、突然倒れている生徒が出てきたら誰だってそのくらいは叫ぶの……かな?
3年Z組の教室全体がザワザワとしている。
「何事だテメェらー。
……あっら結ちゃん大変だねこれ、貧血? 女の子の日だったのかな?」
先生セクハラは止めてください。
あ、でも先生だからいいや。
「よいしょっ」
―――!?
あれ、今の感覚って担がれた?
銀八先生に担がれた―!?
「先生はコイツ保健室に連れてくからテメェら自習!」
「だったら俺も行きます」
と総悟。
「そうアル! 先生一人だけ抜け駆けはいけないネ!!」
と神楽ちゃん。…話ズレてない?
しかし銀八先生はそんな二人を軽くあしらい、
「お前らが来ると五月蝿いだろ。病人に迷惑なの。俺一人で十分だから、お前らの好意はちゃんと結にも伝えておくからさ。
…っていうか、本当はついてきて授業サボりたいだけなんじゃないの?」
最後言われた事を無視して、二人は渋々席に着く。
結局のところ総悟と神楽はただ単に結の傍に居たかったのだった。という事実は、この二人自身しか知らない。
「んじゃあ自習開始な。俺が帰ってくるまで面倒な騒ぎ起こすんじゃねェよ」
銀八は結をおんぶするように体勢を変える。
まだ5月という中途半端な気温のせいか、廊下は少しだけ涼しかった。
静かな空気が二人を包む。
と、同時に、結は意識があるのに目を覚まさない自分に少々腹が立った。
「なァ」
―――…?
銀八は意識の無いと思われる結に声をかける。
実際意識だけはハッキリしている結は微動だにしないが、次に言う銀八の言葉を待った。
「お前…本当に憶えてねェのか?」
―――何を?
「……って、聞いてるわけないか」
不思議な質問を問いかけた銀八が黙り込むと、また静かな廊下に戻る。
結自身は今の言葉の意味が分からず、続きが気になって仕方なかった。
しかし言葉を紡ぐことが出来ない今の状況を理解して、それを諦めた。
「なぁ結。俺がキスしたときの事は憶えてるよな。…嫌すぎて忘れた?」
―――!…そんな事…ないです。
「あん時さ、桜見てるお前がすっげー可愛くてさ、だから……キスしたのかもしんねェ」
銀八は自分に言い聞かせるように続ける。
「でも俺にとってはようやくお前にこうして近づけたって思うよ?
……初めて会ったときから……俺は結の事……」
―――?
自分が独り言を呟いている事に気づいたのか、銀八はハッとなると口を閉じた。
―――……あの、あたしの事………何?