恋連鎖 | ナノ

約3日程前から、風邪でもひいているのだろうか。なんだか頭が締め付けられるように痛い。けれども電車が行ってしまうと、すーっとそれはひいていった。

重い荷物を持ち、初めて立つ駅のホームと春風の香りに独特の懐かしさを感じて、少しだけ心がとろっと…いや、ふわっと、特別な気持ちになるのだ。
携帯電話は小さいころから付き合っているせいか大分くたびれてしまっている。けれども昨日、両親のいる場所から発つ前にバッテリーを新しくしてきたから中身は新品同然だろう。

充電満タン、バリ3のフラグを見て今までと少し違うという事に実感を持つと、まず母に電話をかけた。
無事に着いたよ、うん、いつも通りの会話にこれからしばらく一人暮らしが始まるだなんて考えられなくて、まだちょっぴり旅行気分。
母はやっぱり心配していた。まあ当然のことだろう、いい歳の娘が突然一人暮らし、その上あたしが今までいた所よりも随分と都会で、何が起こるかなんて分かったものじゃない。

「でも戻らないよ。お父さんだって結局何考えてるか分からないし…安心してね、勿論連絡はいれるから。うん」

正直、あたしなんて今どこにいようが関係ないのだ。

母にそう告げると言葉が途切れ、独特の電子的な静けさが聞こえた。

「そっちにいても、まともにお母さんとお父さんの事も覚えてないんだから…いい機会だよ、お母さんも混乱してるんでしょ?……ふふっ、うん、大丈夫大丈夫、昔のことなんてこれっぽっちも覚えてないのは確かだけど、余計に新しい事に挑戦したいね。ってことで新天地なんだから。
…お父さんに言っておいて、帰ってくる頃にはお互い親子らしくしようって。……それじゃあね」


父はあたしが目を覚ましてからずっと視線を合わせなかった。
去年の秋の事だ。
母は何も教えてくれなかった。だからあたしは、きっと昔に何か自分と大喧嘩なりしたんだろう、と自己解決で終わらせている。
良く知りはしないけれど実の父なのは確かなのだ。だから仲良くしたい、目と目を見てお父さんって言いたい。

正直新しくこっちにきたのは、そういう父との気まずさから逃げ出したいという気持ちもあった。

それに自分は昔の自分じゃなく、新しい園江結になっているのだ。…一応。

ある程度生活をして、自分らしさが戻れば分かり合えるだろう。そう思って来たのだ。


「時間ピッタリだ」


人気のない朝のホーム。時計を見てポツリと呟くと自然と笑顔が浮かび元気になれた。

母が手配してくれた転校先の学校…の前に、マンションに行ってこの重い荷物を片づけなくてはいけない。

朝の7時。

桜の花びらが新学期を漂わせ、とりあえずあたしは階段を下りた。







いつの間にそんな月日が流れたんですか





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