恋連鎖 | ナノ
教室に戻ってもずっと上の空だ。
神楽ちゃんに言われてようやく目を覚ます。
なにかあったのか、と、流石に無断で授業をサボッてしまったことが原因で皆疑問に思っているようだ。問い詰められて困惑する。なんだか心配をかけてしまって申し訳ない。
適当に、迷っていたら授業に出遅れてしまった、と言い訳を作る。
沖田君に、「結はまだ全くこの学校に慣れてやせんからねィ」と言われて、うまい具合にフォローになり皆納得してくれた。
…そう言うわけじゃないのだ。
ただ、何でこうなったのだろうかと、気になって授業が頭に入ってこない。
ようやく皆は席に戻る。
心はモヤモヤドキドキハラハラしたまま、落ち着きがやってこない。
「〜〜〜〜〜〜」
まさか、こんなに早く先生と……いや、単純に、まさか先生とキスするとは。
思いもよらない出来事に全くついていけなかった。
ただあの時の風の温度と、視界に写った景色は鮮明に、事実として蘇ってくるのだ、何度も、何度も。
そのたびに心臓は速く速く加速して、寿命でも縮まってしまうんじゃないかって思って。なによりも、これからどうやって先生と接していくべきなのだろうか、と困惑する。
こういうとき、主人公席、と呼ばれる窓側の一番後ろの席だったらどれだけよかっただろう。
外の景色を眺めていれば誰にも表情はうかがえない。春麗な心地よさに心も癒されるばかり。
けれども残念(ではないか)なことに、あたしの周りにはイケメン君たちが座っていて、四方八方からさらにあたしの心臓を加速させて潰そうと、神様から仰せつかっているのだきっと。
泣きたくないけど、泣きたいです。
「どーしよ…」
誰にも聞こえない声で呟けば、さらに悩みは深みに落ちていくばかりだった。
「とりあえずお隣さんに菓子折り(という名の捨てようと思っていたファミコン)を届けないと…」
別の行動で気分を紛らわすのが一番だ。
明日の事は明日考えよう。
こうしてあたしは次の授業に臨み、見事ばっちり模範生徒のごとく授業に参加したのであった。
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