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あの日から数日臨也は眠れない日が続いたが身体の傷が癒える頃には感情の整理もでき、あれは事故のようなものだと自己完結した。
事実あれ以来静雄に襲われることも無く、日常が戻った。いつも通り罠を仕掛け、追い掛けられ、喧嘩する。
そんな日常が3ヶ月程過ぎると臨也の身体に異変が起きた。
微熱と吐き気、倦怠感が続き、新羅に相談した。
臨也自身あれはトラウマと呼べるもので、少なからずストレスを抱えてる自覚はあった。新羅に相談したのも安定剤や睡眠薬を貰う為だったが、彼の口から発せられたのは信じられない事実。

「冷静に聞いてよ。君は妊娠している」
頭の中が真っ白、というわけではない。新羅の発した言葉の意味を臨也の脳が理解するのに数秒を要した。
「な、何言ってるのかなぁ?俺、男だよ…」
「そんなことは僕だって百も承知さ。だが、事実だ。驚天動地、奇々怪々。悪いが僕でも対処出来ないよ。出来る事は女性に対する対応と同じものだけだ。それより、誰の子だい?」
「っ…」
臨也の肩が強ばり、ただでさえ悪かった顔色が更に青ざめた。
「まぁ予想はついてるよ。君達がそんな関係だったとは予想外だけどね。いや・・・静雄がそんな手段に出たことが予想外、と言うべきかな。強姦されたんだろ?」
新羅の直接的な物言いに臨也も苦笑するしかなかった。
「ははは、流石新羅だね。大当たりさ!それにしても男なのにレイプされて、男なのに妊娠した俺へのいたわりってモノは無いのかな?」
新羅は笑う臨也の手を取り握りしめる。
「そんな上辺だけの言葉が必要?産むのかい?堕ろすなら…」
「命がある限り、この子も人間だよ。人ラブの俺が産まない筈ないだろ!こんな経験、滅多に出来ないしね。フフっ‥新羅も楽しみだろ?なんなら俺のことも解剖してみる?今なら格安で引き受けるよ!もちろんアフターケア込みでね」
「無理するなよ。痛々しい」
精一杯の虚勢を見透かされ突き付けられた真実に視界が涙に滲む。
「………シズちゃんには黙っててよ」
新羅の肩に顔を埋める。
「君がそれを望むなら」
「無関心って、こーゆう時便利だね」
薄く笑って立ち上がった臨也へ新羅は薬を渡す。
「睡眠薬の類は処方できないからね。せめてもの栄養剤だよ。本気で産む気なら体力つけておきなよ」
「ありがと。出産の時は宜しくね」

「愛執染着とは言ったものだ。静雄に愛されないなら子供かい?まったく馬鹿げてるね」
部屋を出ていく臨也の消えそうな後ろ姿を見送った新羅が呟く。その顔は悲愴と侮蔑に歪んでいた。

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