1.王子様と魔女

【魔物の巣くう城に棲む魔女を倒し王子を救えば、永遠の命と巨万の富を手に入れられる】
いつしか日々也王子の国にはそんな噂が流れ始めました。
街の中心にある漆黒の城は腕に自信ある者、財宝目当ての者、興味本位の者などが日夜訪れます。

今日もまた名誉と金目当ての顔も剣術も三流な騎士が城門をくぐりました。。
漆黒の影で覆われた城内は蔦や影で迷路のようになっております。1m先すら薄暗く、はっきり見えません。所々に蔦に絡まり壁の一部と化した白骨死体があり、三流騎士は足が竦んで動けなくなりました。


「またハズレ。セルティ、さっさと終わらせて」
玉座の間に冷たい声が響きました。
声の主は囚われている筈の日々也王子です。日々也王子は玉座に座り、諸悪の根源である筈の漆黒の魔女へ命令しております。

「下賎の者が…」
『人間とは、姿形が全てでは無いぞ』
顔が無い魔女は空中に影で文字を書きます。
「ハッ!さすが首なしだ、言うことが違う。そんな事は分かっている。だが、私のナイトは私に釣り合う容姿でなければな」
『日々也、そろそろ真面目に今後を考えないか?こんなお遊びをいつまでも…』
「君の愛しい彼氏がどうなってもいいの?」
遮るように言うと魔女の肩が僅かに震え、玉座の間から出て行きました。大きな扉が閉まると日々也王子は満足げに笑いました。


セルティと呼ばれた漆黒の魔女は、本来デュラハンという死を誘う妖精です。しかしある時、首を失いました。途方に暮れていたデュラハンを助けたのは日々也王子に仕えていた宮廷医師でした。
国政は上々で暇な日々也王子は宮廷医師を人質に、退屈から脱却すべくセルティを使って城を迷宮化し、街に囚われの王子がいると噂を流したのです。
日々也王子の狙い通り、城には腕自慢な騎士達が集まりましたが、顔も強さも王子好みの者はいませんでした。
そのたびセルティを使い追い払っていたのです。



一方その頃、美女の情報を求め酒場に入ったデリックは例の噂を耳にしました。かなり誇張された噂にデリックも馬鹿馬鹿しいとは思いましたが、もし魔女が美女だったらもったいないと考え、城に向かうことにしました。


「マジかよ…」
城に着くと噂通り城全体を黒い影が覆ってました。
城門を開け中に入った瞬間、影が襲い掛かってきました。質量をもつ影は槍のような形でデリックを攻め立てます。
並外れた瞬発力と剣捌きで影をかわすと、噴水であろう建造物の前に漆黒の魔女がおりました。




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