2

目を開けると俺の部屋。
随分前の夢を見た。
シズちゃんとの喧嘩もセックスも、始めたばっかで青臭かった頃。
今も惰性で関係は続いてる。気持ちが無いかって言ったら嘘。少なくとも俺は。
セフレ以上恋人未満。
青臭さは変わってないな。


お腹のあたりが重くて首を起こすと、傷んだ金髪。夢の原因はコレか。
身体中痛い。シズちゃんと喧嘩してたのは覚えてるけど、どーなったんだっけ?
頭がぼーっとして、考えるのも面倒。

ゴソゴソと金色が動いた。
「‥大丈夫か?」
「うん。状況説明して」
「鎖骨折れた。あと、太股ザックリ」
テンパってるのか片言なシズちゃん。
「新羅が診てくれたの?」
「あぁ。それ、薬」
サイドボードに水と薬の袋が置いてある。開けてみると強めの痛み止めと解熱剤が入ってるあたり、太股の傷は深そうだ。麻酔が効いてるのか感覚がない。

「悪い」
「なんで謝んの?」
「俺のせいだ」
「何度も言ってるだろ?俺達の喧嘩は自己責任。避けきれなかった俺が悪い」
「…あぁ」
こーゆう時のシズちゃんが一番イライラする。
「強いて言えば、鎖骨はギプス出来ないから厄介だなって程度だよ」
「…あぁ」
「あぁ、じゃないよ。いつもいつもいつもいつも…俺が怪我する度に落ち込んで。あー頭痛くなってきた」
ひんやりした手がおでこに当てられる。
「大丈夫か?」
殊更心配そうな顔だ。

「ねぇシズちゃん。高校の時の喧嘩、覚えてる?」
「だいたいは」
「2年の時、雨の日に喧嘩して俺んち来た時のは?君が俺の身体みてヘコんだ日」
「……………覚えてる」
「あの時、俺がなんて言ったかは?」
「俺の暴力が好きだって」
「正解。じゃ、何が必要か分かるでしょ?」
「あ?」
「舐めて」
「おい、安静だって…」
「関係ない。今、ムラムラしてんの。起こして」
シズちゃんは俺を起こして、背に枕を挟んでくれた。
正直、身体中痛くてダルい。
どうにか笑顔でシズちゃんを誘う。
「はやく」
譲らない俺にシズちゃんは渋々服を脱がしはじめた。

舌が傷口を広げて中の肉を舐められると、ジンッとした痛みが脳に響く。
まるでシズちゃんに愛されてるような気持ち。
これが欲しくて喧嘩する。
とんだ自慰行為に付き合わせてるな。
我ながら卑怯だ。

「なぁ。テメェ俺との繋がりを暴力だと思ってねぇか?」
お腹のあたりで太股の包帯を見るシズちゃんが呟いた。
「違うの?俺の身体の傷が繋がりだよ」
「ちげーよ」
優しい声色で、愛おしそうに太股にキスされる。
「もう俺は傷が無くたってテメェから離れられねー」
傷にシズちゃんの声が響く。
「テメェだからやりてえんだ。傷があるからじゃねぇよ」
「なにそれ」
「いい加減分かれよ。好きだ」
シズちゃんの口から一番欲しい言葉がこぼれた。

もう6年も俺の心は縛られてて、身体でシズちゃんを縛っていた。
鼻の奥がツンっとして、解放された心がじわじわ温まる。
「おい、どっか痛いのか?」
涙を流した俺にシズちゃんは慌てて起き上がる。
「んん、ちがう‥よ」
シズちゃんに腕を伸ばして引き寄せる。
頭を抱き締めて
「うれしいの」
と、囁いた。
こんなに純粋な俺の気持ちを言葉にしたのはいつ以来だろう。いや、他人に本心を打ち明けたことなんて無い。

「俺も好きだよ、シズちゃん」
シズちゃんが俺を好きになるよりも前から、ずっと。




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