「馬鹿だ馬鹿だとは思ってましたけど、貴女がそこまでの馬鹿だとは思いませんでした」
「あははははははっ、キューテンキューったら辛辣だ」
「貴女みたいに弱ったらしい人があの《百年の孤独》に敵うわけがありませんよ」
「うん、まあ、そうだけどさ」


だからって。
あたしは死ねないし。
死にたくないし。
今まで死に物狂いで生きてきた。
今まで死線に従順に、惨めったらしく生きてきた。
抗うことくらいは許されていいんじゃないか。
このまま生きて逝くなんて、死んでもゴメンだ。


「実際あたしはその凄さをよく知らないんだよね」
「うん、まあ、君の好きな戦い方ではないからね」
「……ああ、なりすまし、だったっけ?」
「君はそんな女々しいのよりも、あからさまな暴力のほうが見ていて楽しいんでしょ?」
「本ッ当趣味悪ぃー」
「キューテンキュー、口を慎みなよ」


苦笑混じりに窘める誘くん。


「そうだ、騒禍ちゃん」
「うん?」
「そんな弱ったらしい君に朗報だよ」


朗報?
あたしは首を傾げて見せた。


「うん。――《蝸牛角上の争い同盟》って、知ってるよね?」
「えっ、知らない」
「……………」
「……………」
「ごめん、なにそのくそダッサい同盟、かなり笑えるんだけど」
「……君の奇妙に気嵩で向こう見ずなところ、好きだよ」


溜息混じりに苦笑する。吐息の分泌量からは呆れが含まれていると考察できるね。

彼はその尤態をゆっくりと起こし上げる。


「お願い、キューテンキュー」
「《蝸牛角上の争い同盟》とは、まあ、言うなれば……貴女のファンクラブみたいなものです」
「えぇええぇ、やだ、キショい」
「……………」
「……………」
「…………、《蝸牛角上の争い同盟》、別名《激情降伏党》」


撃攘幸福党。


「貴女と同じ戦争主義者の集まりです。まあ、どちらかと言えば、貴女に触発されて、戦争主義になった者の集まり、ですかねー…………」
「喧嘩誘発屋、戦争谷騒禍に心底心酔していてね……今世界で言い触らされてる戦争谷騒禍殺害計画に大変な遺憾を示しているみたいだよ」
「やったあ、ちょー嬉しーい」


あたしは髪を弄りながら答えた。


「だからきっと、君の役に立ってくれるだろうね。もしかしたら、縄内恋若を消すことにだって、賛同し協力してくれるかもしれないよ?」


三月はまた小さく欠伸をした。


蝸牛角上の争い同盟。
激情降伏党。
撃攘幸福党。
あたしに触発されたキチガイ連中の集まり。


ふぅん。
そっか。
なるほどね。


「名前だけ、覚えとく」
「うん、そうしておいて」


そう締め括ったであろう、まさかのタイミングで。


「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■――――ッ!!」


獰猛な憤怒が産声した。



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