まるで獣だな。
あたしは眼前の光景をそう言い吐いた。

《カンパニー》の*+αにて。あたしはVIPルームで戦奴たちの試合を見ていた。外の試合場よりほんのりと薄暗く、ソファーと机が揃っていて、空調だって冷暖房完備。快適な環境で試合を観賞出来る。試合っていうか殺し合いなわけだけど。
力の限りを尽くし生命を打ち震わせ相手を徹底的に潰しにかかっている。もう汚いったりゃあらしない。必死で必至。ただただ暴力を振るい奮っているだけの戦いだった。別にこっちのが見てて気持ちいいけど、ただなんというか、感動が足りないんだよなあ。


「魚くんの戦いは――――もっと綺麗だったよねー……」


綺麗というか、キレがいい。
暴戻で剽悍で勇猛で、だけどとても秀麗で。
そう。
まるで。


「爆竹みたいな」
「花火って言えないんすか、アンタ」


あたしの後ろに控えて退屈そうにしている三月がそう言った。あたしは肩を震わせて笑う。振り向くと、倦怠げな目とかちあった。
更にその後ろには誘くんとキューテンキュー。誘くんは相変わらずの寛厚そうな柔らかい笑みを浮かべている。キューテンキューはその無機質な目で試合を眺望していた。

くぁぁあっと三月が欠伸した。うっわ。あの口に手突っ込みたい。


「眠そうだね、三月」
「そりゃあ、眠いっすよ……暇だし、あんま寝れてないし………………」
「あははははっ」


三月の頬を包帯に巻かれた手で小突いた。微妙そうな顔であたしの手から遠ざかる。
ふと顔をあげると、誘くんがさっきまでの喜色のない、ちょっと浮かない顔をしていた。
あたしは首を傾げる。
すると彼はぴくんと顔をあげて、ガラス越しの試合に目を移す。あたしは試合に向き直った。


「勝者! 山椒魚!」


そのマイク越しの声のあと、「オオォォオォオッ」という猛々しい歓喜と、下品なくらいのブーイングが響く。

あたしは目を瞬いた。


「山椒魚?」
「うん」
「え、誘くん。今の山椒魚って言った?」
「うん。言ったね」
「山椒魚って……どっかで聞いたことあるんだよね」
「あるんじゃないかな。少なくともそんな名前の人間中々いないと思うし」
「そう、だよね」


でも、どこで聞いたかは思い出せないんだよなあ…………うーんなんか気持ち悪い。


「まあ、いっか」


いいんだよ、まあ、と。
誘くんは柔和に笑んで首を傾げて見せた。


「それで、騒禍ちゃん。縄内恋若を消すんだってね?」


まだワアワアと騒ぐ会場から目を離して誘くんに向き直った。

そう。
あたしは。
縄内恋若を、消す。


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