「そういえばさ、萵苣たん達は昨日来た入国者さんたちだよね?」
「よくわかるな」
「わかるよー、そんな緑の目した人ここにはいないもん!」


俺は、あー、と呟く。
そっか。
レオさんは頭を気にして帽子をくれたけど、目だって気にするべきだった。サングラスとかで。……やりすぎだろうか、まあ目立ちにくいだろうし。


「茄子たんも。綺麗な目だね」


急に褒められて、茄子は恥ずかしそうに俯いた。

茄子の目は、綺麗な紫色だ。パンジーの花にあるような、凍えるように高潔な紫。

俺の緑も。
茄子の紫も。
才知畑特有の発色だ。

うん?
才知畑………、茄子?

そういや。

なんで茄子はこんなところにいるんだ? 本来なら、才知畑で勉学に励んでいる筈だろう。何で茄子はウラオモテランドなんかにいるんだよ。ウラオモテランドで、俺を見てたんだ。訳がわからない。そもそも、なんであの才知畑に雇われたっていうフルボトル姉妹や黒男は、俺が此処にいるってわかったんだ。…………いや、そこまで掘り下げたら次から次へと疑問が湧き出て来るな。考えるのはよそう。めんどいし。わざわざ自分から面が倒れるようなことはしたくない。


「でも、本当にさっきの黒男物騒だったよね」
「見た目からして………ね……」
「あんなのウラオモテランドには少ないと思ってたんだけど」


苦笑する小芥苔子に魚は頭上にハテナを浮かべる。


「それって、ウラオモテランドはかなり治安が良いってこと?」
「そんな感じ。ウラオモテランドに警察官が少ないのは総人口的な関係もあるんだけど、一番は治安の問題。良すぎるんだなあ、皆何もしないのさ。警察の働き掛けで何もしないんじゃなくって自ら何もしない。平和に過ごしたい。そういうある程度統一された意思があるとさ、平和で平和で仕方がないんだ。うにゃはははは、寧穏たんいらずで仲良く生きられるなんてね。彼にとっちゃここは素敵な場所なんだろうな。だって争いが無いんだもん」


良いことだよね、と、彼女は笑った。……ガスマスクのまま。笑ったかどうか実は定かではない。ただ肩が揺れただけだ。
くそ。
それじゃ目細めたくらいしかわかんねぇだろ。


「ていうか、元々ウラオモテランドの団結は強いんだよ。昔大きな街にいて、そこから追い出されるように分離して、一からここを造っていったんだもんね」


そういえば。
言っていた。
ウラオモテランドは、とある大きな勢力の片割れだと。


「…………追い出されたんじゃ、ないだろうけど……」


ぼそぼそと水倒火転の芯の無い声が小さく紡いだ。

それに相次いで、茄子の面持ちが暗くなる。




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