「会いたかったよザンザス!ティアーモ!」 「うぜぇ」 歓喜するなまえを一蹴して、ザンザスはどこから持って来たのかふかふかのソファに腰かけた。その前には大理石のテーブルがある。これはこの前応接室にあったのを見かけたから多分そこから拝借してきたのだろう。 もともとゼミ室にあった机とイスは左右の壁に押しのけられている。 「来い」 「うん」 尻尾振ってるみてーだな。そんな事を考えながらザンザスは横に座ろうとしたなまえの腰を掴んで自分の上に座らせた。 「ぎゃー!きゃー!」 「るせぇ。犬。」 「犬!?」 ガキ共の世話をするなど反吐が出る。しかしそれを我慢してこなしているのは他でもないなまえの為だ。 (これ以上自分の所有物を傷付けられたら任務などどうなるか知れねェ。 この学園ごと根絶やしてやる。) 「ちょ、ザンザス何その凶悪面」 「あ゛?」 「あ、もとからか。…ごめんごめんほっへつねららいれ」 「フン」 「おひ、お昼食べるんじゃないの?」 「ここで食やいいだろ」 ザンザスが私の反応を楽しんでいる事は明白である。私は弁当を大理石のテーブルの上に置いて、すすっと太ももを滑る手をつねる。ちょっと!舌打ち止めなさい。 私はザンザスの上でくるりと半回転して足の上にまたがった。 暫くの間、静かにザンザスを見つめる。 「…」 ――会いたくて、恋焦がれたザンザスがここにいる。 …会いに来てくれた。 その感動は未だに胸を温め続けている。ザンザスが傍にいると知っているだけで、こんなにも心が軽い。 「へへ」 「…何笑ってやがる」 「いや…。ね」 ザンザスがいなくたって仕事はできる!暗殺も、もちろんこのクソみたいな任務も完遂する自信が私にはある。――けどね 「ザンザスがいると、わたしって無敵になれるみたい」 言った瞬間唇を塞がれた。 (え!!何…なに!?) 目をパチパチしてザンザスの顔を見ると、眉間にしわが寄っていてなんだか不機嫌そう。 終いには拳銃まで取り出す始末。 私の台詞そんなにウザかったかな、と思いかけた時、ザンザスは腕を真横に突き出して壁の時計を撃ち抜いた。落下して砕け散った時計の中から小型カメラが放り出される。 そっか、昨日ベル達が新しく隠しカメラ取り付けたんだっけ。 後でスクアーロ怒るな。 「…ん、ふ。……はぁ」 「カス」 ザンザスは私の頬と、耳たぶに唇をつけて、どこか満足げに言った。 「俺以外の前でそんな面しやがったらカッ消すぞ」 残響はメロウ そんな面って…どんな顔だろう。 ×
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