「止めて…!」震えるような声で小さく言えば、男子生徒は口を止める。私は教科書に強く握った両手を置きながら、もう一度言った。

「やめて、ください」

今の私はどんな顔をしているのだろう。
きっと真っ青だ。
しかも涙目。2分瞬き我慢してたからね。


「…ハッ。何お前」
誰かが言った。

「あんだけの事しといて、今更何言ってんの?お前は誰に何言われても文句言えねーんだよ」
「ベル君に味方になってもらうつもりだった?ざーんねん」
「僕たち嘘吐けませんからー?」
「ベル君にはちゃんと正直に話さないとね。あんたがしてきたこと、ぜ・ん・ぶ!」

何コイツらめちゃくちゃ性格悪いんですけど、み・ん・な!死ね!
ほんと何でこんな性格悪いガキ救わなきゃいけないの。
いやマジで。
9代目マジで。
こいつら薬でも何でもやらされたらいいよ。その方が未来の日本の為かもね。そう思う。
バーカバーカうんこ。

内心でめちゃくちゃ罵りながら、私は俯く。
僅かに肩を震わせて。


「……何?オマエ何かしたの?」

どこか責めるように私に尋ねるベル。私は首を振った。何度も。

――何もやってないの
本当なの
お願い、
お願い、
信じないで…!

こんなかんじ。

「こいつはさ、俺達のクラスの仲間を苛めてたんだよ。殴って蹴って、殺しかけた―――…悪魔だよ」

悪魔の宴

(悪魔?え?それ褒め言葉じゃねーの?)
いつだったか真面目な顔でそう尋ねて来たベルを思い出した。彼の名前はベルフェゴール。
怠惰を司る悪魔である。

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