「亜里沙ちゃんは学校休んでまで気合入れてくらしいけど、どうすんの?先生方は」 くすくす笑いながら聞けば「うっせぇ」とザンザスに頭を叩かれた。 「俺達は通常業務だぁ」 「場所は並盛だし30分あれば余裕っしょ」 「なんか亜里沙…哀れ」 「顔笑ってんぞぉ!」 それからは他愛のない言葉を交わし、私とベルはジェラートを食べた。 皆で食べた夕ご飯はやっぱり美味しかった。 ……って一年離れたわけでもないのに何この充実感は。 (やっぱりこっちでの数日間は思った以上に精神的に応えていたのかもしれない。) *** 「ザンザース」 「…あ?」 「早くこっち来てよー。わたしもう眠い」 「寝てりゃいいだろ」 「だが断る」 ふっかふかのベッドの上で足をバタつかせていた私は、お風呂上りで髪を乾かしているザンザスを呼びかける。一緒に寝たいとだだをこねたのは私。それをすんなりOKしてくれたザンザスはやっぱり優しい。 溜息を吐いてこちらに歩いてきたザンザスがベッドに腰かけた。 「脱げ」 「はあ!?」 「そういう意味じゃねぇ。脱げ」 「そっそ、そういう意味じゃないなら、どどどういう脱、ぎゃひー」 うとうとしかけていた私の頭は一気に覚醒する。 ぬぬ、脱げっておま!久しぶりに会って溜まってたとか?いや知らんけども! 「やめ、ザンザス」 逃げようとする私の襟首を引っ張って服の裾に手をかけたザンザスの手をさらに押さえる。 「今更何照れてやがる」 「てて、照れてないよ」 「嫌か」 「うん。…あ!違う別にザンザスとすんのは、その…やじゃないけど」 そもそも初めてじゃないし。私が嫌なのは、今身体を見られることだ。 「あたし、いま…あの、汚いし」 「黙れ」 「んんっ」 眉を寄せたザンザスが口をふさぎにかかる。このままいくと流されることは目に見えているので些細ながら抵抗してみるが、それはやはり些細なものでしかない。 深いキスには慣れたはずだったのに、途中からどうしても息遣いが分からなくなってしまう。 「、は…ザンザ、ス」 「なまえ…」 唇を離したザンザスがこつんと額を合わせる。お互いの吐息を感じる距離で、視線が交わった。 「汚くねぇ…。見せろ」 今度こそ何も言えなくなってしまった私は、大人しくボタンを外しにかかった。 全部外し終え、するりと服から腕を抜いた時、ザンザスが痛ましそうに目を眇めたのをなまえは見た。 白い肌のいたるところに、紫色の痣。擦り傷。 「――…殺してぇ」 長い間を空けてぽつりと呟いたザンザス。 私の肩を優しく押してベッドに沈ませると、ザンザスはお腹の方の痣に唇を押し当てた。チリッとした痛みに背中が震える。 「ちょ…ザンザス」 「奴らが付けていいのに俺は悪ィのか」 苛立ちを含ませてそんな事を言いのけたザンザス。 そんなわけない あいつ等に殴られて蹴られて、この痣を見る度に胸に湧き起こるのは殺意だけ。 大きな手のひらで私の両頬を包んだザンザス。紅い二つの相貌はまっすぐに私を射抜き、刻み込むように告げた。 「俺のだ。テメェは」 「っ…うん」 私は情けなく笑って頷いた。 私はザンザスのものだ。 ザンザスの子供じみた独占欲が、たまらなく愛おしい。 「もっとつけて。ずっと…――消えないように」 愛で溺死するセニョリータ ×
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