「氷帝テニス部は亜里沙のもの。だから亜里沙のいない間に、皆に媚び売ったりしちゃやだよ?」 かわいくねーんだよ 「まあ100%ないと思うけどねっ!キャハハ」 「あ、すいません、メールがはいったので」 「…」 亜里沙に一言詫びを入れてブーブーと揺れる鳴らす携帯を取り出す。この振動の間合いはベルだ。受信メールを開くと、 「もうボスも俺らも屋敷にいんだけど。腹へった。早く帰ってこい」とのことである。 「話す事がそれだけなら、私もう帰りたいんですけど」 「……まだあるわ」 いつもならここで逆上している亜里沙。しかし今はなんだか気持ち悪いくらい静かだ。 ふふっと笑みを深めて顔を上げた亜里沙はぞっとするほど甘い声で、 「XANXUS先生」 と、そう囁いた。 私は咄嗟にブレザーの内側に手を差し込み銃を取り出しかける。寸前で堪えたのは、私のご立派な任務遂行精神となけなしの理性だ。 ――っ貴様が 貴様がXANXUSの名を呼ぶな。 その汚い口で、あの人を呼ぶな。 必死で感情を殺し煮えたぎる怒りが外に出ないように平静を繕ったが、それでも亜里沙には私の顔が変わったのが分かったらしい。嬉しそうに両手を胸の前で合わせながら言った。 「ふふふふ、やっぱりね…」 「……何がです?」 「アンタにあの人は勿体ない。亜里沙が奪ってあげる」 ついでにスクアーロ先生と、ベルって転校生も!だってあの二人も超格好いいんだもんっ 私は気付かれないように深呼吸をして心を落ち着かせる。 「言っている意味がよく分かりません。奪う?あの人達は私のものじゃないですよ」 「分かってんじゃない。そ、あの3人は亜里沙のもの」 (ちがうから。ほんと救い様無いよね) 「ねえ、あんたあの人達とどういう関係?」 「…ただの、知り合いです」 あの場面を見られたからには他人とは言えないだろう。ベルは「イタリアの知り合い」という設定にしろと言われている。 「ふうん…ま、どうでもいいわ。アンタがあの人達を頼ってるのは見て分かるけど、それも無駄よ。どうせ3人とも亜里沙の演技にかかればすぐに亜里沙の虜。ふふっ、アンタの絶望に歪む顔が見ものだわ」 「…性格悪」 「負け犬の遠吠えは聞き飽きたのよねぇ」 パイプ椅子に腰かけながら携帯を弄り始める亜里沙。 帰ろうとドアに向かったところで、思い出したように亜里沙が口を開いた。 「それとね、命が惜しかったらそろそろその態度も改めた方がいいわよ」 「…どういう意味ですか」 「アンタ…前に言ったわよねぇ」 亜里沙は首元からネックレスに繋がれた例のリングを取り出した。 「アルギットファミリーが中小マフィアだって」 「言いましたけど」 「後悔するわよ」 「?」 「明日の会合の相手って、実はマフィアなの」 それは初耳だ。(もしかしたら、また何か企んでいるのかも) これは使える情報かも知れないと私はさっきよりも耳を澄ませて亜里沙の言葉を聞きのがすまいとした。 亜里沙もバカな奴だな 相手がどこの誰とも知れないのに、そんな情報バラかしちゃうなんて。 私がそんな事を思っているなどとは露知らず、亜里沙は人差し指を立てて言った。 「伝統、格式、規模、勢力、全てにおいて別格。知る人ぞ知るイタリア最強の大手マフィアグループ……。あんたも出身がイタリアなら聞いたことくらいあるでしょ?」 「……まさか」 にやり。彼女の口元が歪む。 「そう、ボンゴレファミリーよ」 んなアホな ×
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