「おい」 校門を出たところで後ろから呼びかけられる。後ろ、というより車道からだ。 「…何ですかそれ」 「乗ってけ」 「いやですよ。目立つし」 「お前はイヤイヤばっかだな」 溜息を吐いた跡部は「良いから乗れ」とベンツのドアを開ける。これ以上ここでもめているとさらに目立つため、私は諦めて車に乗り込んだ。 ザンザスと一緒に出かける時やボンゴレ本部に行く時にたまに乗るから初めてではないけど…一般人的に驚いておいた方がよさそうだ。 「…靴は、ぬ」「脱がなくていい」一般人の間抜けな発言にも慣れた対応である。 「お前、家はどこだ?」 「あー…うーん」 「?」 「帰りに買い物して帰るから、駅前のショッピングセンターで下していただけたら…嬉しいです」 「分かった。…オイ、」 「はい。かしこまりました景吾様」 「…すごいですね」 素直に感心すると跡部はフフンと鼻を高くした。 「今日はどうだった」 「どうって…何がです?」 「アーン?部活に決まってるだろ」 「……あの汚さは常軌を逸していましたね」 「ああ。お前はよくやった。ありがとよ」 「…」 「何を驚いてやがる」 「いえ…別に」 「俺様だって礼ぐらい言える」 機嫌を損ねてしまったらしい。歳相応に拗ねる姿に僅かに可愛げを覚え、私は軽く笑った。車が音も振動もなく静かに止まり、私はドアに手をかけた。 「…興味ないって言いましたけど」 「あ?」 「今は、少しありますよ。テニスにも あなた方にも」 「!!」 送ってくださってありがとうございました。丁寧に頭を下げてドアを閉める。驚いた跡部の顔は中々面白かった。 ――さて君は、明日一体どんな反応をしてくれるのかな。 溺愛している亜里沙の嘘を見抜き、諭し、彼女を正しい道へ導くというのなら文句はないんだけど… 期待は程々に 中学生にそれを求めちゃうのって、ちょっと酷だよね。 ×
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