「また日本には来るんだろ。ここには顔を見せるんだろうな?アーン」
「フッそれはどうかな!」
「お前がそのつもりなら俺様が行くから問題はねぇが」
「大ありだよ!」
「自家用ジェットで行く」
「ボンボンめ。」
「なまえ」
「あン!?」
「…餞別代りにイイ事教えてやろうか?シンデレラ」
「しんでれら?は?」


跡部は不敵に笑みを浮かべながら腕時計を指した。

「12時まで後15分だ。」
「……


 …!!!!」

私の顔はきっとムンクだ。

「ぎゃああー!!!はよ、はよ言えし!」
「俺様も今気付いたんだよ」
「やばっやば!じゃああたし行くわ!」
「おう。………ってオイ!そっちは校庭だぞ!」
「んー!!!」

跡部の声を背中で聞きながら私は自己トップスピードで校庭に向かった。正確には、校庭方面校舎沿い。だ。
ロータリーを突っ切って曲がれば、あー!と声が揃って向けられた。


「「「苗字先輩!!」」」
「はっけーん!」

彼らにはお世話になった、すっごい。めちゃ癒しだった。
ということで、準レギュの皆に挨拶無しで立ち去ろうなんて、義理人情に欠けた真似はできやしない!

「苗字先輩!マジ久しぶりっす!」
「元気でした!?」
「怪我してません!?」
「先輩あの日クソかっこよかったです」
「俺今の苗字先輩すげー好み!」「お前どさくさに紛れて何言ってんだよ!」
「ぜんばいのむじつ、じょうめいざれてよがったっっず!!!」
「おま、きたねぇよ!」
「先輩のドリンク飲めなくなんのかぁ…!」
「つれーッスよ先輩!!」

どうやら、ここも相変わらず優しいらしい

「みんな、ずっと信じててくれてありがとう…!」

「そっそんな!先輩」
「やめてくださいよ、おれらべつに」

「ううん、君らには救われっぱなしだったから。ほんとに感謝してるの!


――ありがとうね!」

いっぱいに手を広げて、近くにいた子達まとめてぎゅっとハグをする。
照れ臭そうに笑う彼らは最初から最後まで癒しであった。

「時間無いからもう行くね!」

「先輩!」
「?」

「今のレギュラー陣は正直、クソ強ぇけど」
「俺達頑張りますから!!」
「いつか」

「いつか、また来てください!!」

あっちもこっちも、向上心の強さはいい勝負だ。(こりゃレギュラーの彼らもうかうかしてらんないな。)

「下剋上、期待してる!!」

元気よく揃った返事を背中に聞きながら、私は学校のフェンスを飛び越えて通りに出た。
12時まであと5分。
屋根伝いに走ればギリギリ間に合う、か…!?

ぎゅっと足元に力を込めた瞬間。

「ドカスが」
襟首がぐいっと引っ張られました。

(あ、リアルキング…)
(何ほざいてやがるドカス。)

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