掃除は「上から下へ」の法則を駆使すべし!とはルッスの決めたお掃除ルールのひとつだった。私はその掟通り、床に散らばっているもの尾取りあえず机に乗せ、窓を開け、ロッカーの上から埃を落とした。
「これだけでだいぶ違うな…。流石ルッス」

それからぞうきんを持ち出し、これまた上から下へ。上から下へ。床のゴミや埃はちりとりでとってゴミ袋へ突っ込んだ。ゴキブリは出なかったけど真っ白になって息絶えたダンゴ虫なら数匹発見した。
白骨死体なら何度かお目にかかっているけど、こいつらも似たような感じだろうか。そう考えるとそこまで気持ち悪くなくなった。――ドンマイ。心の中で合掌する。


床と壁をピカピカに磨くと、窓の外からピーピーと洗濯機が終了の合図を鳴らした。
私は一度部室を出て、裏にある洗濯機から乾いた真っ白のタオルを取り出す。最近の洗濯機は洗濯だけでなく脱水乾燥までやってくれるというのだから有難い。(亜里沙よりよっぽど使える)


タオルを畳んで引き出しにしまい、そこらにほっぽってあった部員達の制服を畳んでテーブルに乗せておいた。名前が見えるように名札のついているポケットをちゃんと上にした。やばい、私すごい。使える女の鏡だ。
調子に乗った私は二度目の洗濯(持ち主不明の靴下やTシャツ)をすべく、軽くスキップしながら部室の裏に回った。洗濯機を始動させ部室へ戻る途中、コートの反対側の水道に群がる準レギュラーの面々が目に入った。
視線を少しずらせば、レギュラー達にドリンクを配る亜里沙の姿。

ふむふむ、彼らには水道の水飲めってわけね。


「かっわいそー」

小さくつぶやいた私の耳に「うわぁあああ!!」とコート内に響く悲鳴が届いた。誰もが動きを止めて、そちらに目を向ける。私はだっとそちらに向かって走った。

野太い悲鳴はSOS?
何か、粗相をしただろうか。

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