ベルがお弁当(わたし作!)のウィンナーにフォークを突き刺しながら言った。

「つーわけで、作戦どーり、王子はあの性格顔面ブス女を見事上げて落としたってわけ。しっししし」
「作戦通りではないよね」
「あん?」
それに反論する私。
まあ、屋上での作戦会議の成果は出たと言っていいだろうけど…

「上げて落とせとは言ったけど、上げる期間随分短かったんじゃない?5分も上げてないよ!これじゃー『フワ、ドン!』だよ。私が望んでたのは『フワッフワッフワ、ズドォン!』なの。わかる?このちがい」
「他に説明の仕方ねーのか」
何やら豪華な食事をとっている跡部。
何だそれ。どこのフルコース?どっから持って来たの。

「…でも分かったでしょ?」
「何となくはな」
「わかんねーよ。つーか王子好きでもない奴褒めるとかやっぱ無理だわ。見ろよコレ、近付いただけでこの蕁麻疹」
ベルが袖をまくった所で、ゼミ室の扉がガラっと開いた。

「あ、ザンザス!」
「う゛お゛ぉおい!!俺もいるぞぉ!」
「…と、スクアーロ」
「ついでかぁ!!」
「昨日から思ってたが、こいつの声煩すぎじゃねえか?アーン?」
眉をひそめた跡部の尤もな言葉に、私とベルが思わずふきだした。
「んだとガキィ!」
「邪魔だ」
「うゲッ!…んん〜?あーザンザス先生…、おっこどすとか酷いC〜」

ザンザスの特等席でぷーぷー寝ていたジローは、蹴り落とすというザンザスのあんまりな扱いに文句を言っている。でもジロー。こればっかりは無理だよ。

「オイ、ドカス」
「アーン?」
「そりゃ…何だ」
「…フッ、これか。」
ザンザスが目に留めたのは跡部のお弁当だ。

「これは跡部家専属シェフが毎日屋敷から運んでくる俺様専用のランチだ」
「う゛お゛ぉぉい!ガキが生意気だぞぉ」
「何だ?欲しけりゃ人数分取り寄せてやるが」
「は?いらねーからそんなん!なんてったってザンザスにもベルにもスクにも、なまえちゃん特製お弁当があるからね!」
「「寄こせ」」「王子も」
「ちょっと!!」

そりゃ跡部のお弁当は美味しそうだけど。心なしか、あのキラキラの描写も見えるけど!
訴えかけたところで、眠たげなジローが、ベルのお弁当からおかずを一つつまんで口に放った。
「あ、テメ」
「もぐもぐもぐ…んー」
「待ってベル!…ね、どうジローちゃん。おいしい?」
「んー、普通だね〜」
「ぶはっ」
「な…」

普通だ、とか、まあまあ食える、とかザンザス達はよく言っていたけど、それは彼らなりの「超美味しい」なんだろうと勝手に解釈していただけに、ジローからのその感想は効いた。

「…くそ、料理練習してやる」
「無駄だドカス。センスがねえ」
「ふぐっ」
「まあ確かに、料理できそうには見えねぇな」
「うぐっ」

ブロークンハート

私はこの日、本気で料理を勉強しようと心に決めたのである。
あと、俺様ーズの息が意外と合っていてびっくりした。早くも手ごわいコンビになりそうな予感がするのは、スクアーロも一緒だろうと思う。

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