「第二音楽室に向かっていました」
「樺地…お前」

「……自分は、鳥居さんとも苗字さんとも深い関わりはありません。噂の真偽も…」

これほど饒舌な樺地を、跡部は初めて見たと思った。
肩を落として小さくなっていた樺地がここでようやく跡部の目を見た。決意のこもった瞳に、疑いの色は無い。

「だから自分は、跡部部長の信じたものを信じます」
「…」

―――おれの、信じたもの
樺地のその言葉を聞いて跡部はフッと口角を上げ、いつもの王者のふるまいをして見せた。



「…俺様に着いて来い。樺地」
「ウス…!」





人気の無い4階の廊下を抜ければ、第二音楽室にたどり着く。
ここは普段吹奏楽部が練習の為放課後に使用する目的の部屋で、昼間はこうして全く使われていない。防音素材の重々しい扉を押し開けると、そこにはただ広々とした空間が広がっていた。

「…いねぇみたいだな。本当にここへ向かったのか?」
「ウス…」

「あ、跡部!…と樺ちゃん?」
「ウス」
「しししっ何このデカ物」
「お前ら、どうしてここが」

踊り場からかけ出てきたのはジローとベルだ。二人を迎えた跡部と樺地にジローが曖昧に説明した。

「俺達も今来たとこだが、どうやら中にはいねぇらしい」
「……しっしし、奥だろ」

室内がカーペットであるもかかわらず上履きでズカズカと中へ入っていったベル。
――奥。
そう言われて、跡部達も音楽室の奥にもう一つ部屋がある事を思い出した。音楽準備室である。扉に手をかけたベルが「鍵かかってる」と呟いた。

「俺すぐ取ってくるC!」
「いや…自分が行きます」
「蹴破りゃいいだろ」
「ししし、俺もそう思ってた、と、こ!」

ガシャン!!ベルの蹴りによってドアノブが外れ、扉が大きく開いた。
――ドゥン!
それと同時に四人の頭上を突き抜けていったのは、一発の銃弾。

「「「!!!!」」」
「……なまえ?」

第二音楽準備室の悲劇

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