「は、はい…パン。」「遅ェ!」


そんな兄妹の会話を十文字は横で眺めながらそっと思うのだった。…俺はこの二人が兄妹だなんてたとえ金積まれたとしても信じたくねぇ。



「んで。何で糞長男まで一緒なんだよ」
「テメーの妹があらぬ方向へ進もうとしてんのが悪ィ」
ガシャコン
「ごごごめんってば!方向音痴って治んないの!」
「治る治んねェじゃねー!死ぬ気で治しやがれ!」
「んな無茶な…」



ヒル魔のあまりの剣幕になまえがビビり倒していると、突如部室の戸が開け放たれた。



「よー兄!さっきあの馬鹿兄貴がまた…」「…よ、」


なまえはあんぐり開けて、突然登場した少女を見る。それからもう一度ヒル魔を見て口を開いた。




「い、いつの間に妹増えたの!聞いてない!」
「「…。」」
「やー?」







「ええええええ!?よー兄の!?」
「もはやその反応は万国共通だな」
「モンジ何でびっくりしないの!」
「俺は昨日一生分のびっくりを体験したばっかだぞ」


「ええええええ!?妹じゃないの!?あ痛っ」
「たりめーだろうが。んなポコポコ餓鬼ができてたまるか」
「…そっかぁ」

私は未だビックリ顔の彼女、鈴音ちゃんを見つめた。彼女もまた何か言いたげにこちらを見ている。



「は、はじめまして。ヒル魔なまえっていいます…どうぞ、よろしく」
「……―――――!!」
「え、…て、うげふっ」
「ヤ―――!かわいい!」


鈴音はなまえのショートな金髪の巻き毛に顔を埋めて、力いっぱい抱きしめた。


「よー兄の妹じゃないみたい!!」
「(誰もが思っても言わなかったことをサラリと…)」
「正真正銘、兄妹だけどな」
「むぐ、う…くるし」
「あ!ごめん、なまえ」

かちん




「あれ…?なまえ、あれ?何か泣いてない!?そ、そんなに苦しかった」
「…うう!あたし友達に名前呼ばれたの、はじめて…!」
「「えええええ」」
「ケケケ!お前らこいつのチキン度なめるんじゃねェぞ。アメリカはまだフレンドリーな国だからマシだが、日本じゃ…な?友達一人もいないもん、な?ケケケ」
「うびえええ!」
「「悪魔だ」」


ヒル魔は未だべそをかき続けているなまえの頭を乱暴に引き寄せて抱え込みながら、十文字達に顔を向けた。


「よ、よーにい!それ、なまえ息できてる!?」
「ああできてる」
「もがいてるぞ」
「ああできてる。そこで、だ。テメー等いいか?オトモダチ…まではこの俺が許可するが」
「……。」

「いいか!下心丸出しに近付いてくる奴はブチ殺せ!YA-HA-!」

「ぶは、やっと息が…あれ?何の話してたの…?何で二人とも顔が真っ青…」
「ケケ、テメーの気にするこっちゃねェ!用が済んだならさっさと出てけガキ共!」

「…核爆弾、だな」
「…うん…核爆弾」
「?」

(ケケケ!うぜェチビだが)(嫁にはやらねェ!)

 

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