『ヒル魔妖一だな。貴様の妹は預かった。返して欲しければ今から賊学裏廃工場に来い』
「あーあー、ンだコリャ、電波が悪くて聞こえねーな」
『なっ、貴様ふざけて』
「もしもォし、おかしーな。一体どうなっているんだー?もしもーし」
『クソッこいつ状況が』『馬鹿野郎切れ!逆探知だ!!』ブツッーー


「チッ」
後数秒ありゃ居場所が割り出せたんだが、向こうにも多少頭の回るのがいるらしい。
履歴に残ったなまえの携帯番号を見つめ、ヒル魔は無表情に思考を巡らせた。

「あ……あのう、ヒル魔さん」

そこへ恐る恐る声をかけたのは、先程から部室にいたものの完全に空気になっていたセナだ。
正確には、買い出しに出た栗田、小結、滝、鈴音以外のメンバーは全員揃っていたのだが、ヒル魔のあまりの機嫌の悪さに声をかけられずにいたのだ。


「なまえに何かあったのか?」
武蔵の確信めいた問いかけ。ヒル魔のその様子を見れば、彼女絡みであることは想像に難くない。

「…あの糞方向音痴、拉致られやがった」
「ええーー!!」
「ケケケ、まあ、よくあることだけどな」
「よくある事って…ど、どうするのよヒル魔君!」
「決まってんだろ」

再度携帯を開いたヒル魔は、とある番号をプッシュすると、通話口にニヤリと狡猾な……悪魔の如く凶悪な顔をしてみせた。

「仕事だファッキン奴隷共……。この俺に歯向かうとどんな目に遭うか思い知らせてやらねーとな。殊更、」

アイツを人質に使いやがったからには

(今から一体どんな恐ろしい事が……)
(言うなセナ…。俺も…っつーかなまえも同じ気持ちだぜきっと)

 

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