阿含さんとご飯を食べに行った日から1週間が経った。
よー兄は私が阿含さんと遊びに行ったことを聞いたらやっぱり悪魔のように目を吊り上げて怒っていたけど、私は阿含さんはそんなに悪い人じゃないことを一生懸命話した。最後にはよー兄も(すっごい不本意そうに)分かってくれたみたい。



「十文字君!おはよう」
「おう。なまえ」


普段の学校生活もだんだん慣れてきて、始めはよー兄の妹という事で敬遠されていた(というか恐がられていた)私も、徐々にクラスメイトやアメフト部の人達とコミュニケーションが取れるようになってきていた。




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プルルル…


「はい、もしもし阿含さん?――学校?今終わりましたよ。今日ですか?はい、大丈夫ですけど。………いいですねそれ!いきたいです。…はい。それじゃあ5時に」


携帯を畳んでブレザーに押し込んだなまえに、隣からセナがおずおずと話しかけた。

「今の…阿含さん?」
「うん!なんか隣の駅にできた美味しいパフェ屋さんに連れてってくれるって」
「なまえと阿含さんって仲いいんだね」
「え…」

(仲がいいかと聞かれれば、…うーんどうだろう。)


「そんな頻繁に遊んでるわけじゃないから…たぶん阿含さんの暇つぶしだよ!」
そう断言するとセナ君に複雑そうな顔をされてしまった。



「セナ君も阿含さんは嫌い?」
「う、うーん…嫌いというか怖いというか…。あ、でもなまえはヒル魔さんで恐いのには慣れてるのかな」
「あんまり慣れてないよ!よー兄まじ怖い!」
「そ、そっか!」
「阿含さんも怖いよ!よく泣かされるし」
「泣かされるんだ!?」
「でも優しいとこもあるの。この前なんかね、私がうっかり車に轢かれそうになった時」
「危なっ」
「阿含さんがシュバッて引っ張って助けてくれて。」
「(神速のインパルスがこんな所でも…)」
「セナ君知ってる?阿含さんってすごく早いんだよ!」
「し、知ってる!!なんかもうすっごい知ってる!」
「それでその後すっごく怒られたんだけど……ふふ、なんだかね」
「…」


「その怒り方が、とってもよー兄に似てたの!
――だからおかしくて笑っちゃって、阿含さんにはもっと怒られちゃった。」

なまえは愛らしく笑った。


「よー兄も怖くて意地悪だけど優しいの。だから、二人はちょっと似ているよね」


プルルル…

「あ、はいもしもうわぁ!!そそそ、そんなにおっきい声出さないでくださいよ…心臓がとまっちゃう。え?いやまだ学校ですけ、っひーん!おこりんぼ!30分は余裕持てって…大丈夫ですよ!迷わないもん…!」

しばらく半べそになっていたなまえの顔が、数秒後、ころりとやわらぐのを見た。

「―――……はい!待ってます」

セナはなまえのその表情を見て思った。
阿含さんはもしかしたら、なまえの事をとても……気に入っているのかもしれない。

 

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