それから何週間かして、私はなんとか泥門高校とアメフト部の雰囲気に慣れてきた。もう登下校も一人でこなせるほどに成長した。鼻高々にそう言えば、無表情のよー兄に、背中にだんごむしを入れられた。泣いた。

「ぐすぐす、ぐすん」

この前知り合いになった、アメフト部の心優しきマネージャーまもりさんは勇猛果敢にもよー兄に抗議の声を上げていて、わたしはまもりさんを尊敬のまなざしで見つめた。
しかし、銃器を取り出しておぞましい笑みを浮かべるよー兄に対抗してモップをかかげる彼女もまた怖かったので、私はとりあえず部室を飛び出したのだった。


「えげつない…よー兄まじえげつない」


気付いたら校門のところまで走って来ていたらしい。
ほとぼりがさめるまでここで草でもむしっていようかな、と腰をかがめたところで、遠くからドゥルン、ドゥルン!!と轟音が近付いて来た。

私は顔を上げ、驚愕する。
泥門高校に飛び込んできたのは、そりゃもうワルっぽさが全開なバイクの群れだったのである。


「カーッ!退け退けカス共!ひき殺されたくなきゃなァ!!」

べしゃんと尻餅をついた私のすぐ傍に止まったバイクは再び荒々しく唸りだす。私は声も出せずにひたすらビビっていた。
(なんなのこれ…なんなのこれ!)

「荒れてんな、葉柱さん」
「そりゃそうだろ。今週はいって2度目だぜ」
「あの野郎俺達をパシリに使いやがって」
「だがバイクには変えられねェしな」
「クソ!ヒル魔の野郎ッ」

ひるまのやろうっ!!
私は泣きながら名も知れぬ不良さんに同調した。
またよー兄!
いっつもよー兄!

「カッ、」

そこでようやく、ヘルメットを脱ぎ捨てた男の人は地面に座り込んでいる私を見下ろした。

しばらくの沈黙

「…ぶっ殺す!!」
「なんで!!」

私と葉柱さんの出会いは、こんなふうだった。


(はァァァ!!?こ、こいつがテメェの妹!!?)
(ケッケケケケ!あーそうだ下僕諸君、キミタチさっきボクの大事な大事な妹にたしか「ブッコロス」とかなんとか)
(言ってません!)

 

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