Side フレム
※このお話は、心の広い方向けとなっています。
2016年1月にPixivにて公開した交流を目的とした物語。





こよみの国・九曜――

年に一度、この土地は盛大な賑わいを見せることで有名な場所だ。こよみの国と言われているだけあり、年の切り替わり……つまり大晦日から新年の三箇日にかけて多くの人たちで往来しているそうだ。


「わあ、見たこともないものばかりがお店に並んでいますね! フロストさん」

「そうだな、年明け休暇をここで過ごすのもまた一興か……お前が共に在るなら尚更だ」

「あけましておめでとうございます」

「ああ、今年もよろしく頼む」

「はい!」


今回、婚約発表を済ませた私とフロストさんはめまぐるしく忙しい日々を送っていた。

そして今日……なんとか予定を調整することで、三箇日は休暇を取ることができたのだ。


「フレム、あれはなんだ?」

「お雑煮、でしょうか? エルサと一緒によく作っていました、懐かしいです!」

「象煮?? 象を煮るのか、新年早々凄まじいことをするのだな」

「……ん?」


……あれ? なんか、勘違いを起こしているような……?


「象を煮るって、お前面白いこと言うな〜!!」

「!」


ケラケラ笑う声が聞こえ、振り返るとそこにはウニのようにツンツンとした頭の男性が私たちに話しかけてきた。


「蛮ちゃん、知らないみたいだし仕方がないってば。あのですね、雑煮はコレのことを言うんですよ!」


相棒であろう黄色髪の青年が、ハァと息を吐きながら私たちに二つの茶碗を手渡してくれた。

お餅に里芋に人参……お雑煮の定番のものが入っている代物に、フロストさんは興味津々だ。


「ほう? これが雑煮とやらか」

「お餅は多めに入れておきましたから! 俺、奪還屋の天野銀次と言います! 向こうで声かけしているのは蛮ちゃんで、俺の相棒なんです! 内緒でサービスしますから、近くの腰掛で食べてください」

「え? でもこれ、なんだか申し訳が……」

「俺が良いって言ってるんですから、良いんです! ささ、また蛮ちゃんが五月蠅く言う前に……早く早く」


ポンッと二頭身になる彼は、雑煮を私たちに手渡してビチビチと音を立てながら腰掛へと案内してくれた。

そして「それじゃ!」と言い残して蛮と呼んでる人の元へと戻って行ってしまう。


「スープのような汁の中にモチとやらが入っているのか……量が少ないのではないか?」

「他にも色々出店はあるみたいですし、観光しながら食べればいいんじゃないですか?」

「ふむ、それもそうだな」


こうして私たちは、サービスとして受け取ったお雑煮を堪能してこの九曜の土地を観光していくのだった。
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