映画の国・ケナル、彩の月――
現在、この国では『ビートン・フィルムパーク』と呼ばれる大きなテーマパークがオープンされようとしていた。
現在は最終調整に入っており、オープンまであと数日を迫っている。そんな中、私はプレオープン前のテーマパークの招待状を受取り足を運んでいた。
ウィルさんを始めとした、映画の国の王子たちに歓迎されながら各々のテーマパークの一角で展開されている建物を教えてもらう。迫力あるものや感動するものまで、本当にそれぞれが携わっている映画をテーマにしたアトラクションやレストランがありとても楽しい。
そして、テーマパークを一通り回り終えて近くにある椅子に腰かけた。
「ずっと歩きまわって、疲れただろう。無理してないかい?」
私にそう優しく声をかけてきたのは、ビートン・フィルムパークの総指揮を任されている一人・テルさんだ。
「近くの自販機で飲み物を買ってきました! 良ければどうぞ」
「あ、ありがとうございます」
ニコッと笑顔を向けながら私に缶ジュースを手渡してくれたのは、ロマンディアのジェラルドさん。俳優として有名な王子様で、恋愛映画の出演が多いこともあり沢山のファンからの声援が後を絶たない。
ラブロマンス以外……特にテルさんの弟であるウィルさんの作る映画に出演したいと話していたけれど……
「なあジェラルド、ウィル監督の交渉はどうなったんだ?」
「やっぱり、何度お願いしてもダメで……僕の何が足りないんでしょうか……」
心配そうに声をかけたのは、スタントとして有名なボティブルのジェットさん。
ジェラルドさん……あ、ここでは親しくジェリーと呼んで下さいって言われていたんだっけ。ジェリーは、ジェットさんや羅漢星の万里さんの協力を貰いながら体力をつける特訓をしている。大の運動音痴なのだと、教えてくれた。運動音痴はゆっくりと克服してはいるようだけど、ウィルさんが出演を断っているのはそこが問題ではないことを私は知っている。
(ホラー映画には不釣り合いだって、以前教えてくれたっけ。血色が良すぎるし、あとイケメンなのもいただけないんだとか……)
このことを、当の本人に言っても良いものか困っているのは、また別の話になる。
「あれ? そう言えば、ウィル監督の姿が見えませんね」
「さっきお手洗いに行くって言ってたよ。すぐ戻ってくるんじゃないかな」
辺りを見渡す万里さんに、テルさんがそう返事をする。
つまり、ここにはウィルさん以外のメンバーが揃っているということだ。聞くなら、今かもしれない……!
「あ、あの……!」
「? どうかしましたか?」
「実は、皆さんに聞きたいことが……!!」
私は意を決して、言葉を切り出していった……
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