短編 | ナノ
ジャックとピノキオ

「カク、みっけ!」

自分の名を呼ばれて振り返ると、そこにはジャックランタンが立っていた。
綺麗にくり抜かれた本物のカボチャを頭に被るその姿は、最早仮装と言っていいのか分からない。
しかも、知り合いのようなのだが、顔は分からないし、声は籠もってしまい聞きづらいので誰なのか………。

いや。
カボチャを頭に被っているが、マントを羽織った、この小柄なシルエットは見覚えがある。

「………ノエル?」

「そうだよ。似合う?」

弾んだ声で言って、くるりとその場で回るノエル。
似合うも何も、ジャックランタン以外の何者でもない。
魔女や黒猫などの可愛らしい仮装を期待していたのだが、まさかこんな本格的な仮装をするとは思っていなかった。
しかし、まあなんだ。
ノエルが仮装をしているだけで愛らしいから、その仮装がジャックランタンだろうが、ゾンビだろうが、何も問題ないのだ。

「似合っとるぞ。自分で作ったのか?」

「うん、頑張ってくり抜いたよ。カクは―――ピノキオの仮装?」

「そうじゃ。似合うかのう?」

「ものすごく!本物だって言われても信じるくらいに似合ってる。………けど、なんでハロウィンにピノキオなんだ?」

うんうんと激しく頷いていたノエルは、続いてきょとんと重たげな頭を傾げた。
ノエルの質問に、カクは胸を張って答える。

「ピノキオは人形なのに、夜な夜な動いては人を襲うんじゃろ。しかも、わざと嘘をついて鼻を伸ばし、相手を刺殺するという………」

「なにそれ、怖い!そんなピノキオ嫌だよ!!」

「へっ?」

「ピノキオはちょっと嘘つきな人形が、色んな経験をして人間になるっていう心温まるストーリーだよ」

「ホラーじゃないのか………?」

「ないよ。ピノキオが夜な夜な人を刺殺するなんて………誰から聞いたんだよ?」


誰かと聞かれて脳裏に浮かぶのは、派手な赤髪の幼なじみ。

大口開けて笑いながら
『やだ、カクってばマジで信じてたの?超ウケる〜!!』
と、まったく悪気のない声が脳内再生された。


「あんのクソ狐〜っ!!」

「あはっ、また例の幼なじみさんに騙されたんだ」

→アイスバーグ

11/10/22

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