短編 | ナノ
エイプリルフール:ルッチ

騙し、騙されるエイプリルフール。
既にエイプリルフールと構えているせいか、今のところ騙されることはなかった。
カクの嘘は見抜けたし(泣かれたけど)、パウリーはエイプリルフールということを忘れていたし、アイスバーグは嘘のつもりだろうけど『真面目に仕事する』とか言うから快くカリファに送り届けたし(信じたことにしましたよ)、あたしの勝ちだ。
まあ、エイプリルフールって分かってるんだから、なかなか騙されたりしないよな。


「あ、ルッチ」


作業に必要な道具を取りに倉庫に入ると、ルッチが中にいた。
道具を取り出しているルッチの隣に立ち、あたしも必要な道具を探しながら話しかけた。

「パウリーの万馬券、本当だったみたい」

「………タイミングの悪い奴だな」

「あはっ、エイプリルフールだからな。誰も信じてくれないって拗ねてたよ」

いつもギャンブルで負け続けのパウリーが、エイプリルフールに万馬券を当てたなどと言えば間違いなく嘘だろうと思ってしまう。
まあ、あたしもちょっと疑ったし。

それにしても、ルッチはこういうバカ騒ぎには参加しないのかなぁ。
そう思いながら、ルッチを眺めていると彼の肩に常に留まっている相棒の姿がないことに気付いた。
あたしと二人だけの時はルッチは腹話術を使わないから、つい気付くのが遅れてしまった。


「ハットリは?」


きょろきょろと倉庫内を探してみるけど、白いハトの姿は何処にもない。
目立つ色だから見過ごすことはないと思うんだけど。


「…………食べた」

「へっ?」


一瞬、何を言われたのか分からなくてぱちぱちと目を瞬いた。


食べたってルッチがハットリを?


そんな訳ないことは分かってる。
ってことは、ルッチもエイプリルフールに乗っかったらしい。
ルッチがエイプリルフールに参加することも意外だったが、まさかそんな分かりやすい嘘をつくとは思わなかった。


「なに言ってんの、ルッチ」


あはっと笑いながらルッチに視線を移すと、彼は無表情のままあたしを見つめている。
いや、基本的にはいつも無表情なんだけどね。
なんていうか、いつもより遥かに冷たい無表情?


「え、まさか………嘘だよね?」


まさかとは思いながらも、あたしはルッチのお腹を見つめる。
いやいやいや。
そもそもなんでルッチがハットリを食べなきゃいけないんだって―――。


『クルッポー』


ルッチのお腹からハットリの鳴き声が聞こえた。



無茶な嘘に騙される




「腹からハットリの鳴き声とかさ!何気に腹話術の腕を上げないでよ!びっくりしただろ!?」

「騙されるか、普通………」

『クルッポー』

「ハットリ!そいつ、突っついちゃえ!!」

→彫刻家

11/04/01

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