短編 | ナノ
エイプリルフール:彫刻家

すっかり騙されちゃったな。
腹からハットリの鳴き声とかさぁ……。
いつの間にルッチは腹話術の腕を上げたんだろ?

1番ドック内を歩きながら、ふぅっと溜息を吐く。

なんか騙されっ放しっていうのも楽しくない。
せっかくエイプリルフールなんだし、何か嘘をついてみようかなぁ。
でも、嘘って苦手なんだよ〜。

どんな嘘をつこうかなって考えていると、前方に職長たち一行が見えてきた。


「どうしたんじゃ?」

「難しい顔してるぞ」


考え込み過ぎてしまったらしい。
尖らせた唇を引っ込めて、職長たちを見つめる。


「えーとさ……」

言い掛けながら、前にみんなが慌てた時のことを思い出す。


ああ、そうだ。
あたしの家にトランクスがあった時だ。
彼氏が出来たんじゃないかとか大騒ぎになったんだよ。
まあ、結局はあたしの下着だったわけですが。
なんでか、みんなあたしに彼氏が出来そうになると大騒ぎなんだよな。



「明日、フランキーとデートなんだけど、どんな服を着てこうかなって」



そう言って、満面の笑みを浮かべてみる。
まあ、本当に明日は『フランキー一家』と遊びに行くからまったくの嘘って訳じゃないけど。
服に悩んでるのも本当だ。
モズとキウイが可愛い服を着てこいってリクエストするからさぁ。
いつものズボンじゃ可愛いとは言えないもんな。
でも、スカートって飛んだり跳ねたりすると、すぐにパンツが見えてパウリーたちにお説教されるし……。


「でぇと?」

「フランキーと?」


あたしの言った話題に食いつく五人。

お、これは好印象?
みんな騙されてくれたのかな?

にまにましながら五人を見つめていたあたしの顔は、彼らの会話に徐々に引き攣ることになる。



「ウオオオオオオオォォォッッ!!!」

「デートだと、あのサイボーグ野郎……」

「いつの間に手ェ出しやがったんじゃあっ!?」

「鉄クズに戻すか」

『クルッポー』



あれ?
あれれ?
なんかちょっと、皆様の様子がおかしいようなんですが?

っていうか、なんでタイルストンは大砲を掴んでるのかな?
ルルは刀を持ってるし、カクはノコギリ。
パウリーはロープを腕に絡めて、ルッチはハンマーだ。


え……。
なんかものすごく嫌な予感しかしないんだけど。


「え、ちょ、今日はエイプリルフールだからね。嘘だって分かってるよな!?」


あたしの叫びは、もちろんのことながら1番ドックを飛び出して行った職長たちには届かなかった。



嘘の代償




「フランキー、逃げてぇーっ!!超逃げてぇーっ!!」


END

11/04/01

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