短編 | ナノ
エイプリルフール:パウリー

昨日のヤガラレースで万馬券を出したパウリーは、ご機嫌で1番ドックに向かっていた。
普段が負け続きなのでプラマイゼロな気がしないでもないが、それでも大きな当たりが出れば嬉しい。

にまにまと気持ちの悪い笑顔を浮かべるパウリーに、いつもと様子が違うと思ったのだろう。
カクやルッチが訝しそうに見つめてくる。


「なんじゃ、にやにやして」

『気持ち悪いッポー』


気味の悪いものを見つめるようにして眉を寄せるカクに、失礼極まりない暴言を吐くルッチ。
いつもならば喧嘩になるであろう二人の態度も、今のパウリーにはなんでもない。
得意げに胸を逸らして昨日の大勝を二人に宣言した。


「万馬券が当たったんだよ」


パウリーの言葉に、カクとルッチは途端に興味が失せたように溜息をつく。


「そりゃ、スゴいのー」

『くるっぽー』


棒読み台詞のカクに、ルッチに至っては鳴き声だけだ。
二人はパウリーに背を向けると、すたすたと離れて行ってしまった。

なんだ、この反応の薄さは。
肩透かしを食らったかのようにパウリーは首を傾げる。
前に三連単を当てた時はかなり驚いていたのだが。


「パウリー、おはよ」

挨拶と共に、勢いよく背中に抱き着いてきたのは1番ドックの紅一点だ。
今日も朝から楽しそうに笑顔を振り撒いている。
わしわしと青色の髪をかき混ぜるように撫でると、嬉しそうに目を細めた。

「なんか微妙な顔してるけど、どうかした?」

そう言って不思議そうにこちらを見上げてくる少女に先ほどのことを思い出す。

「いや、ヤガラレースで万馬券が当たったんだけどよ。やけに反応が薄くて………」

パウリーの言葉に少女は大きな目をぱちぱちと瞬いてから、あははと笑い出した。
腹を抱えて笑う少女に、パウリーは何事かと目を丸くするしかない。


「それは、タイミングが悪かったね。今日に限ってそんなこと言うなんて、そりゃ誰も信じないよ」

「なんで信じないんだよ?」


意味が分からずに唇を尖らせるパウリーに、少女は小さく笑いながら告げた。


「だって、今日はエイプリルフールだから」

「あ!?」



本当のことを言っても信じてもらえない日




「久しぶりの大勝ちおめでとー」

「今日は何でも奢ってやる」

「わーい!パウリー、男前!………ルッチたちには?」

「信じなかったアイツらには奢ってやらねェ!!」

→ルッチ

11/04/01

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