短編 | ナノ
エイプリルフール:カク

今日はエイプリルフール。
嘘をついてもいい日なのだ。
エニエス・ロビーにいた頃……いや、あの女狐に会ってからは毎回毎回、騙されてる側に回っていたが、今年こそは騙す側に回ってみたい!

ぐっと拳を握りしめ、カクはちらりとターゲットに視線を移した。

ターゲットは装飾・彫刻職の職長の少女だ。
無垢そのものの彼女を騙すことは少し胸が痛むが、今日は嘘をついても許される日だ。
彼女のことだからきっと笑って許してくれるだろう。

しかし、どんな嘘をつけばいいものか。
出来れば、それが嘘だと分かった後に落ち込んでしまうよりも笑ってくれるようなものがいい。
となると、どんな嘘が………。


「おはよ、カク。なに難しい顔してるの?」

嘘を考えつく前に、いつの間にか少女が目の前に立っていた。
不思議そうに顔を覗き込まれ、このまま黙っているわけにはいかない。


自分の中での最大の嘘は―――。



「おぬしなんか嫌いじゃ!!」



言ってしまった。
大好きな少女に思わずそう告げてしまったカクだが、これはちょっとやりすぎたのではないだろうか。
これではエイプリルフールを楽しむと言うよりも、なんだか少女を傷つけてしまっただけのような気がする。
青ざめた顔でぐるぐると頭の中でいろいろと考えているカクを、少女がじぃっと見上げる。

そうして無表情のまま少女が口を開いた。


「あたしもカクのこと大嫌い」



大嫌いの反対は?




「なにやってんだ?」

「いや、今日はエイプリルフールだろ。だから、カクの嘘にのっかっただけのはずなんだけど………」

「わっ………わしのこと嫌いって……しかも大嫌いって………ぐす」

「だから、嘘だってばー。あたし、カクのこと大好きだよ。だから、いい加減に泣き止もう。ね?」

→パウリー

11/04/01

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