短編 | ナノ
意地っ張りな二人への5題:ジャブラ

「……………………」

ジャブラを見つめ、あたしは唇を噛み締めた。

結局ルッチの膝の上から蹴り落とされたあたしは、覚悟を決めてジャブラに謝ろうと声を掛けた。
けれど、呼び止めて以降は全く声を発していない。
謝らなきゃと思うのに、どうしてジャブラの前に出ると謝罪の言葉が出てこないのかしら。

ごめんなさい、又はごめん。
最高六文字、最低でも三文字。

その一言がどうして出てこないのよ、もうっ!!


「どうした、女狐。腹でも下したか?」

「誰のお腹がゴロピーなのよ?お黙り、野良犬」


そう言い捨ててから、頭を抱えて床をのた打ち回りたくなった。

いやいや。
数秒前まで謝ろうと思ってた人間の態度じゃないわよね、これ?
あたし、なに?
精神の病気か何かですか?

そりゃあ、女の子(って年でもないか)にお腹を下したのか聞くジャブラのデリカシーのなさも酷いとは思うけど、どう冷静に考えたっていきなりこの返答はないんじゃないの?

この口が……この口が悪いのが全部悪い!
なんなの、あたしは!?
今流行のツンデレとか言う属性もってたわけ?
ツンデレ萌えとか世間では言ってるらしいけど(注:情報が古い)、実際にこれだけ突っかかってくるやつがいたらムカつくだけだからね!?

最早、謝れる雰囲気でもなくなっちゃったわよ。
どうしよう……。

再び黙り込んでしまったあたしを見つめ、ジャブラはがりがりと乱暴に頭を掻く。
そして、呆れたように溜息をついた。
耳に届いた空気を吐き出す音に、心臓がぎゅうっと掴まれた様に悲鳴を上げた。

やだ!
ジャブラには嫌われたくない!!


「ごめんなさいっ!!」


あ……言えた。
ようやく口から出てきた謝罪に、俯いていた顔をそろりと上げる。
急に謝ったあたしにジャブラは鋭い目を見開いて……呆れたように苦笑を浮かべた。
どっちにしても呆れられんのかい。

「バァカ」

そう言って、ジャブラがあたしの頭をぽんぽんと叩く。

まあ……見捨てられるよりはいいわよね。

05:口が悪くても、見捨てないでくれますか


「で、謝ったのになんで笑うのよ?」
「間抜けな面してるからだ」


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10/02/28

by追憶の苑

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