mitei きみが咲かせる花だから | ナノ


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他人の分のレポートをしなくてよくなったので、時間ができた。というわけでゲームをしよう!!
とか思い立つまでもなく俺は自分の部屋でゲーム機とデート中である。新しいソフト全然触る暇なかったんだよね、やっとできる。

ゲームが好きなのかと言われれば、まあ普通くらい。寝食も忘れて一日何時間もやり込む、なんてことはなく、暇があれば、あと気になるゲームがあれば、ポチポチしてるくらい。そんでも、集中してる時にスマホがブーブー鳴ってたらさすがにイラッとはするよな。それも三分に一回くらいの頻度で、緊急でない用件で、ポンッと表示される人物を見たら尚更。

鬱陶しいのでクッションの下にでも置いて黙っといてもらおうとついにスマホを手に取ると、またポンッと新しいメッセージが表示された。あ、弾みで既読つけちゃった。

『ゲーム楽しい?でもずっとやってると目悪くしちゃうよ』

うるせー。お前に関係ないだろ。
というか毎回毎回、今更だけど何でゲームしてるって分かるんだ、勉強してるかもしれないだろ。ゲームしてるけど。

『まあ知らない奴と遊んでるよりずっといいけど、ちょっとは休憩しなよ』

「…うざぁ」

彼氏気取りか。友達でもないというのにこのハーフアップクソ野郎は…。
まぁ、一応訊いてみようかな。

『ブロックしていいか』、と。
すると秒で、比喩でなく本当に秒で返事が来た。

『やぁだ』

腹立つぅ。
そう思う間にもすぐに、両手でバツ印を作るかわいいうさぎのスタンプが送られてきた。ちくしょう、うさぎのスタンプに罪はないのにうさぎまで憎たらしく見えてしまう…!

「くそやろう、と。送信」

『ゲームの邪魔しちゃったことは謝るよ、ごめんね。でもあと一時間だけだからね』

「はあああ?何でお前にゲームする時間決められなきゃいけないんだ全く」

なんて言いつつちらりと時計を見ると、日が変わるまであと二時間くらい。晩飯は食ったがまだ風呂には入ってない。
面倒くさいからあとで、を繰り返して今に至るが、明日も普通に二限から講義はある。
一限じゃないからまぁいいかと思ってるんだけど。

『十二時過ぎてもゲームしてたら電話するからね』

「やめろ」

こいつならやりかねない。というかされたことがある。本当に忠告を無視して日が変わってもゲームし続けていたら、一分に一回くらい、出るまでずっと鳴り続けたスマホ…。鬱陶しいを通り越して感心すら覚えたもんだが、もうごめんだ。出たら出たで早く寝ろだのお風呂入れだの飯はちゃんと食ったのかだの、ほとんどお説教だし。オカンか。てか何でまだゲームしてるとか分かるんだ、勉強してるかもしんないだろうが。ゲームだけど。

『しょーくん長めに寝ないともたないんだから、ほどほどにね』

「うるせー。てか言ったことあるっけ…?」

ううむと首を傾げているとポコン、とまたメッセージが。今度は可愛らしいうさぎが「めっ」と注意してくるようなスタンプが送られてきた。もう殴りに行っていいだろうか。
でも夜だし、面倒くさいし、あいつの家知らんし。そんな時間があったらこのステージだけでもクリアしたい。制限時間はあと一時間だ…。

一人暮らしのはずなのに、一人暮らしな感じがしない。本当どうやって俺の行動が分かるのか謎だが、鬱陶しい電話に出るのも嫌なので俺はきっかり一時間でゲームを終えて風呂に入った。くそやろうめ。

『もしもーし。ちゃんと時間守れてえらいじゃーん。髪拭いた?』

「まだ日付け変わってないんだけど!?」

『電話しないとは言ってないし。いやぁ、声聴きたくてさ』

「俺は聴きたくない。ていうか俺、お前のことハーフアップクズで登録してたんだけど何で名前変わってんの?」

『本人にそれ言っちゃうんだ。いやぁひどいよね。ちゃんとおれの名前に戻しといたよ』

「いつの間に」

『しょーくん早く寝なね。寝ないと頭痛くなっちゃうでしょ』

「のぼるだって。ならさっさと電話切れバカ」

『そうだね、ごめんね。ちゃんと布団被って寝るんだよ』

「オカンか」

『こいびとだよ。…ねぇ、名前呼んでよ』

いやに甘い声だと思ったが、ここで呼んだら負けな気がする。何にかは知らない。でもお前だっていつも俺の名前ちゃんと呼ばないじゃんか。

「呼ばねぇよバカ、お前もこんな暇あんならさっさと寝ろ!おやすみ!!」

『あっはは!うん、おやすみ。…また明日』

「………ん」

また明日。また明日か。
毎日毎日、別に会う約束してる訳でも講義が被ってるって訳でもないのにな。

悔しいかな、あいつの声を聴いてると眠くなってくる。さっきまでゲームしてて、何なら徹夜するぞってくらいだった…のに…。なんで、こんなにねむく…。

あ、もしかして…。
話がおもんないあの教授と、似た声なのかもしれない。

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