「で」
「で?」
「どこにあんの?カメラ」
「さて、何のことやら」
「また隠すんなら別れ、」
「テレビの下とテーブルの横とベッド脇です」
「ふうん。そんで全部?」
「………」
「嫌いになっちゃうかも、」
「照明の上と洗面所と玄関とカーテンレールです」
「めちゃくちゃあるじゃん…」
なるほど、ゲームしてるかどうか分かっちゃうわけだ…。溜め息を吐きつつもそれ以上は追及せずに手元の画面に意識を戻した。背中には変人もとい恋人みたいな関係になったハーフアップでもない元ヤンのクズ。属性多いな。
もうほとんど毎日一緒に生活してる俺の家で、ベッドに凭れ掛かった忍に捕まる形で後ろから抱き締められている。そしてそれもいつものことなので特に気にせずゲームに没頭している。
狭いこの部屋ではいつこいつに拘束されるか分からないので、俺は部屋の中でもほぼ常にスマホかゲーム機を手にしたまま行動することが多くなった。こうして彼の抱き枕になってからでは、ゲーム機に手が届かないことが度々あったからだ。
てわけで現在も抱き枕になりながらゲーム中。そしてふと気になったことを彼に質問してみた次第である。思ってたよりあったな…。
そりゃすごいタイミングで電話もできるし、クマもできるわけだ。そんなに見て、何が楽しいんだか。
「撤去してね」
「やだ」
「じゃあ別れ」
「ない」
「じゃあ撤去して」
「じゃあ…一緒に暮らそ」
「へ?」
「一緒に暮らしてたら、生でいつでもたくさん見てられるし、触れるし。狭いなら引っ越そ。ね?」
「いやいや、それって」
「同棲しよ、昇くん」
「もうほとんど毎日一緒に暮らしてるようなもんじゃん」
「ほとんど同じならもう一緒に暮らしてもいいよね?ていうか、同じ家に住めば今かかってる二人分の家賃とか光熱費も半分で済むよね」
「…たしかに?」
「ね、そうしよ。新しいお部屋探そうね」
「いや、ちょっと待って?本当に?」
「寝室は一つね。シングル…はちょっと小さいか。でもベッドあんまり大きくてもなぁ」
「なぁ、やっぱ別に一緒に暮らさなくても…」
「あーぁ!離れてたら寂しくて寂しくて寝られないかも!またクマが出来るかもなぁー」
「えぇ…何でそんな話に」
「あ、明日午後暇でしょ?早速こことーここと、ここ!お部屋見に行こうね!」
「え?あぁ、うん?…うん?」
「好きだよ、昇くん。ちょろくてかわいいおれの恋人」
「今ちょろいって言った?なぁ」
「ちょろかわいい。おれが言うのもなんだけど心配だよ。だから一緒にいさせてね。ずうっと」
「一応、訊くけど。ブロックしても?」
「もう無理だよー!」
「ひぇ…」
ハーフアップポジティブクズ、一瞬目がマジすぎてひゅってなったんだけど。あとどんだけ一緒にいたら慣れるんだろうか。とりあえず一人部屋が欲しいって言ったら、とんでもなくきらきらの笑顔で却下された。
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