「あ、起きやがった」
「……医務室でタバコ吸うのってどうなの、センセー」
「お堅いこと言ってンじゃねーよ。吸うか?」
「やった
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タバコを口に咥え、センセーのタバコから火をもらう。白煙が天井に立ち上る。
「やっべ、センセー窓開けねぇと火災報知器鳴るわ」
「めんどくせぇ」
窓から新鮮な空気が流れ込む。窓から覗く鮮やかな青に悟くんを思い出した。そういえば悟くん、実家には行ったのかな。っていうかあの頭のイカれた任務からどれくらい時間が経ったんだろう。寝た時と空の明るさが変わんないから、そんな経ってないだろうけど。
「俺、どれくらい寝てた?」
「ざっと3日」
「あっは、寝すぎかよ。ウケる」
そりゃ特級二体も相手取ればそうなるか。
「つか、ずっと看ててくれたの?」
「ンなワケあるか。さっき来たとこだ」
嘘が下手。灰皿の煙草、どんなけ山になってると思ってンの。俺の視線の先に気付いたセンセーはフンと鼻で笑う。
「これは五条の坊のだ。銘柄違ぇだろ」
「……悟くん?」
言われてみればなるほど、センセーのミント強めの銘柄とは違い、甘みのあるフレーバーの煙草だ。……あれ、悟くんって喫煙者だったっけ。
「気がまぎれるとかなんとか言ってバカスカ吸ってたぞ。ありゃ肺から煤が出るな」
「マジかよ。俺、悟くんには長生きしてほしいんだけど」
「直接言え。死にそうな顔しやがって」
「……ンな顔してる?」
目の下に手をやる。隈でもできてるのかね。ヤダヤダ、悟くん譲りの男前が台無しじゃん。
「オマエ、なんであんな無茶した」
「いや待って、酷い誤解を感じる。俺だって好きこのんで特級二体の任務選んだ訳じゃねーよ。実家からプレゼントされちゃったの! 分かンだろ」
「クソだな」
「今更」
特級二体祓っちゃったからその内三体と戦わせてくるぞ、マジで。アイツら呪霊の足し算しかできない馬鹿だから。たまには引き算しよーぜ。
「………センセー、俺もう起きたから恵くんのとこ行きなよ。パパだろ」
「あ?」
「センセーさ、ちゃんと親子なんだよ。知ってた? 恵くんもさ、悟くんと一緒の時よりずっと甘えたでさァ」
「……」
「ずりぃよ」
センセーは、俺のパパにはなってくれねーの。
ドアの向こうで何かが落ちたような物音がした。センセーがドアを開け、下を向く。
「あーあ。めんどくせぇ親子だな」
センセーの指が喜久福を摘まんだ。
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