呼びだされて行った実家では、大掃除の真っ最中だった。なんでも、家系図の修復のついでに古くなった諸々を直すらしい。年末にやればいいいものをなんで今やるんだか。
「折角ですから悟様もご覧になってください」
ペタペタと糊を張り修復されている家系図は、何の面白みもないボロい巻物。やたら大きく書かれた僕の名前と、大きくバツのついた叔父さんの下には倫の名前。なんで今更こんなものを見せたがるんだか。
『ちゃんと見に行け。使用人の顔が真っ青に変わるまでじっくりとな』
言い含めるような甚爾の言葉に誘われて実家に来たものの、やはりなんの代り映えもない。
……そういえば。随分と前に、倫は初対面の甚爾に家系図に書かれた自分の名前を指さし名乗ったと聞いた。あの時、甚爾はなんと言っていたか。
『ガキのおもちゃに真新しい家系図とは、五条家はやることがちげェな』
「ねぇ、うちって家系図いくつか持ってないの? こんな古いんだからさ、一々直さずもう一個作るとかしたことないワケ?」
「あらま、悟様ったら! 歴史あるただ一つの家系図になんてこと仰るんです」
「だってボロいし。なんとなく臭い気がする」
「まぁ」
クスクスと笑う使用人に確信する。
なるほど、いくつかある訳ね。それも表向きないことになってる家系図が。
甚爾の言葉に感謝して、ゆっくりと見ることにしよう。使用人の顔が青くなるまでじっくりと。
探し物は殊の外簡単に見つかった。
倫のおもちゃと言っていたから従兄弟の部屋に狙いを絞って探せば案の定だ。
「……へぇ」
書いてあることが違う。
僕の名前がやたら大きいことに変わりはないが、その下が決定的に違った。
「五条、倫……ね」
なるほど確かに、甚爾の言う通り。
「五条家はやることが違うねぇ」
腐ってやがる。
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