俺を組み敷いた男が笑う。
「かわいそうになぁ。兄弟をみんな殺され相伝も継げず、一つ下に相伝持ちの義弟がいると分かってからはますますゴミ扱い。四歳でやっともらえた名前は芥なんでクソみてぇなネーミングセンスだ。しまいにゃ俺に嬲られて犯されて……かわいそうに、なァ」
一つ一つ挙げられた自分の状況はなるほど酷い。殴られ続けた体は熱っぽかった。ちゅぷんと男が腰を動かす。ぞわり、背筋が粟立った。
「気持ちいいだろう、芥。かわいそうになァ。女を抱く前にオナホにされちまってなァ」
かわいそうに、かわいそうにと哀れみの言葉を落とす男は、昨日まで俺に優しく接してくれていた大人だった。ぎゅうと目を瞑ると、頬を張られる。
「目を閉じるな、焼き付けろ。かわいそうにな、クソガキ。信用してた先生に裏切られて辛かろうなァ。……お前のその顔が見たかったんだよ」
ニタニタニタニタと男……先生が笑う。助けてという言葉はあげなかった。あげたところで誰も助けてなんかくれないのだと身に染みるほど理解していた。悲鳴を上げて駆けつけてくれる大人なんて、今自分を犯しているこの先生だけだったのだ。その先生が無体を働いているのだから、助けてくれる人なんている筈もない。
「ほら、術式の練習だ」
先生の拳が俺の腹を殴りつける。痛い。喉奥からせりあがる感覚。げぼりと吐き出すと気に食わなかったのかもう一発殴られる。痛みで体に力がこもる。
「ああ、こいつァいい。殴ると中がよく締まる」
痛い。
「早く術式を使わないと死んじまうぞ?」
覚えの悪い生徒だなぁと呆れ声で紡ぐ先生に奥歯を噛みしめる。クソ、クソクソクソクソ! 爆発しそうなほどの負の感情に術式が発動する。ふわり、出来立ての痣が白い肌に戻る。折れたあばらも元通り。
「かわいそうになァ」
笑いながら先生は同じところに痣を作る。
「治してもまた同じことをされるだけなのになァ」
四歳になって少し経ったばかりのこの日。俺は自分の天与呪縛を知った。
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