Agapanthus




「うわあああ!!!影山あああ死ぬなああ!」
「殺すなよ」
「チッ」
「おい、血ィ止まるまで交替だ!」
「鼻血なんて出てませんっ!」
「出てるよ、なんでうそつくの」
「…影山、うそつくのはやめといたほうがいいぞ」
「?」
「飛雄…?」
『!?』
例えるなら私の顔は見るに耐えないほど恐怖心を煽るような笑顔かもしれない
でも、それに構ってる暇はない
「私の前で、うそ、つく?」
「ほら!柚葵に逆らうと殺されるぞ!」
「……………………………すん、ません」
はあ、とため息が漏れたのは無理もないことだと思う
ティッシュを飛雄に渡しながら他も確認する
目視できるとこには異常はないけど
「目は?」
「…大丈夫っス!」
「そう、上は向いちゃダメだからね…そのままの体勢で我慢してよ。鼻の付け根辺り押さえておいて…そう、それで大丈夫」
「うっす」
「烏養くん、一応医務室連れて行ってくる」
「ああ…どうせ血止まるまで出らんねぇし、見て貰って来い」
「〜〜〜〜〜」
「念のためですよ!」
「ほら!行くよ!」
渋る飛雄の腕を引っ張るけど、こいつ…動かんな
「ヘイ影山!留守は任せろ!」
「そうそう、センパイに任せなさいっての」
「孝支先輩、お願いしますね」
「おう!」
「…見れないのは残念ですが、このバレー馬鹿連れていってきます」
「大丈夫だべ!帰ってきて存分に見てな」
「はい!ほら!飛雄動いて!」
「〜〜〜〜」
このバレー馬鹿は離れるのも相当嫌らしい
「…早くいけば早くコートに戻れるのに」
「早くいきましょう柚葵さん」
チョロいかよ
「それにしても第一号が飛雄だとは思わなかった…」
「?」
「医務室に連れて行く人。勝手に翔ちゃんが最初じゃないかな〜って思っちゃったから」
予想不能で素早い動きをするのは翔ちゃんの方だから、こういうことも翔ちゃんの時だろうと思ってた
「柚葵さん!」
「仁花ちゃん!」
「か、影山くん大丈夫!?」
「ああ…」

「はい、血は止まったね。対応がよかったね。異常はないから戻っていいよ」
『ありがとうございました』
「ッス」
大丈夫だと分かると飛雄は途端に走り出した
「影山くん早い!」
「気持ちは分かるけども!仁花ちゃんごめん!私も先行く!」
「あ!はい!……柚葵さんも足早い…」
飛雄の後ろ姿に追い付く事はできたけど、現役運動部男子高校生に勝てるわけもなく先に戻られてしまった
「烏養さん、もう大丈夫っス」
「おお……その通りか?柚葵」
「っ…は、い……その通りです」
「分かった…まあ、念のためこのセットは菅原のままでいってみる。お前は少し外から見ておけよ」
「…っス!」
「…んで、お前はお前でどうしたんだよ」
「飛雄チャンが自分は無事と分かった瞬間に駆け出したから追いかけてきたの…そりゃ息切れもするよね…」
「お疲れ様柚葵」
「潔子さん…!」
女神
「ナイスキー!」
まあ、孝支先輩のバレーを一刻も早く見たかったってのもある
「チャンスボール、チャンスボール!」
「オーライ」
丁度タイミングよく烏野が繰り出す攻撃は、シンクロ攻撃の孝支先輩版
「おっしゃあああ!!」
「やった!!!」
大地さんは上がったトスをちゃんと決めてくれた
思わず私も烏養くんも武ちゃんも椅子から立ち上がった
「おおお…!シンクロ攻撃ってなんつーか、こうー"薙ぎ払え!"ーって感じだな!?な!?」
『あ、ちょっと意味が』
最近感じる、孝支先輩の男子高校生!な感じがたまらない
「柚葵、顔が凄いよ」
「…す、すみません潔子さん」
これがギャップ萌えってやつなのか
そしてこれの一本が第1セットの王手をかけた
「も一本ナイッサー」
一成が打ったサーブは綺麗にセッターへと返された
その瞬間
『!?』
『!』
「えっ?」
確か過去にもなかったはず
「条善寺もシンクロ攻撃!?」
今までコンビネーションは時間差だけだった
シンクロは見たことはない
「よっしゃあああ」
あ……
「あぁぁ」
だけどそのトスは条善寺の皆の頭上を越えてコートへ落ちていった
このミスのお陰で烏野が第一セット先取
「俺らもよくやってましたねアレ…」
「今もたまにやるけどな…」
「条善寺の今のシンクロ攻撃…多分見様見まね、ぶっつけでやったな…」
「エ!劣勢のーしかもセットポイントでですか!」
「まだ1セット目だからってのもあるだろうが…おっかねえ無鉄砲さだな…」
「最強の自由人選手達…」
流石の雑食烏野でもぶっつけ本番、見様見まねではしない
「………気になってたんですが…条善寺高校の…横断幕…」
「横断幕…?質実剛健の事ですか…?」
「なんと言うか…チームの感じと合ってない…ですよね?」
「確かに、今のチームは違いますね」
「どちらかと言うと"自由奔放!"とかがしっくりきます…」
「いや、昔…つーかごく最近までまさに"質実剛健"なチームだった筈だ条善寺は……な、柚葵?」
「うん…本当に最近までは…それこそ私がこそこそしてた去年」
「こそこそ…」
「隠れながらにデータ集めてたときですけど、その頃とIH予選の時の条善寺が全く違うんです。残っていた質実剛健から自由奔放になった感じです」
「シツジツ??」
「ゴーケン?」
あ、絶対この二人の頭の中は違うものがいる
「"飾り気は無いが本質が充実して逞しく且つ誠実な事"」
「!」
「ほォー!!」
そんな二人に孝支先輩が丁寧に教えてあげていた
というか孝支先輩、辞書みたいに的確で凄い
「3秒で忘れるんだろうな」
「ツッキーが相変わらず辛辣…」
3秒は流石に言い過ぎだけど、明日には忘れてる可能性はあるのが変人コンビだけど
「前までの条善寺はそうだったと…?」
「…恐らく指導者が代わったんだと思う。それに伴ってチームの色もガラリと変わったんじゃねーか?」
「昔より強くなったのは確かですからね」
「でも、まだ色々出来上がってない感はあるな。コンビネーションとかブロックとか……いや、まぁ出来上がってる高校生のが少ないと思うけど」
そう思うと色んな攻撃を安定したトスで繰り出す飛雄はやっぱり凄い
「柚葵」
「はい?」
「影山はいけそうか?」
「血も止まりましたし大丈夫です……戻しますか?」
「だな…よし、2セット目行けるな?影山」
「とっ!!!もっ!!!ハイ!!!」
「おちつけ」
「テンパって"当然です!勿論です!"が一緒になってる飛雄に笑える」
「…と、日向」「ハイ!!!」
「そしてこっちは喰い気味できた…変人コンビ面白すぎる」
「柚葵楽しそう」
「はい、見ててとても面白いです」
「相手がラスト打って来んのか微妙な時は、ブロック付かずに下がっちまえ。強打を打ってくるとしても、通常の攻撃よりは威力も落ちる」
『おす!!』
「2セット目勝って次にいこう」
『おす!!』

2セット目開始
「日向・影山落ち着けよーっ」
孝支先輩に声をかけられてる二人だけど
『うぉおおお』
「聞く耳を持ってないね、あれは」
「なぁんか怖いな」
「やらかさないか祈るのみ」
と、心配した早々に
「ん"っ!!」
「ア"ッ!!」
変人速攻のコンビネーションが合わずに翔ちゃんを越すボール
「大地さん!」
を、読んでいたかのように大地さんがカバーをしてなんとか相手コートへ返した
「大地さんナイス尻拭い!」
「その言い方やめろっての!」
「照島ラスト!」
「また無茶な体勢から…!」
上がったボールを強打で返される
だけど、そこには大地さんがいて…その瞬間変人速攻が決まった
やっぱり早すぎるよなぁこの速攻
「おおっしゃあああ!!」
「今度こそ決まったあああ!!」
「すっすいません!ナイスカバー!!あざす!!」
「どんだけ"落ち着け"って言っても、一発目はお前ら絶対やらかすと思ったんだよねー!力みすぎて」
『!!』
見事な図星である
「…俺にはド派手なプレーは無理だけど"土台"なら作ってやれる」
大地さんは偉大すぎて
「まぁ、存分にやんなさいよ」
頼もしいこの背中にしがみついてる時間は余り残されていないのだと、突きつけられる現実に残される次の代の2年にはプレッシャーが計り知れない
「大地さんの偉大さがしんどい…」
「澤村、ほんとに高校生かよ…」
「ちゃんと高校生ですよ」
「潔子さん…?」
「この間バスケ部の主将と昼御飯争奪戦してて警報器鳴らして怒られてたので」
「っえ!?あれの犯人大地さんだったんですか!?」
「うん」
「意外だな…澤村が田中や西谷がやりそうな事するなんて」
「きっと澤村は、同級生といるときは誰よりも男子高校生なんだと思います」
「なるほど?」
それにしても尚更部活での包容力高すぎません?
「大地さんがしっかりしてるのは荒れ狂う波を乗り越えてきたから…でしょうか?」
「!ふふ…そうだね」
き、潔子さんが綺麗に笑った!
やっぱり3年生には固い絆もしっかりあるからこそ、大地さんが主将として堂々と構えられるんだ
周りが支えてこそ……か
ふと思い出すのはあの日のこと
今は浸ってる場合じゃない…頭を降って思考から追い出す

「どっせい!!ッシャアアア」
「気合い入れろォ!!」
『ウェーイ!』
その後も追い付かれる事なくリードをキープしたまま試合は進んでいる
それに、条善寺の攻略方法がわかったから
「上がった!ラストラスト!」
無理に上がってきたボールに対しては
「下がれ!」
ブロックに付かずにレシーブで対応
「龍!!」
「ッシャアッ!」
「田中ナイス!」
ちゃんと拾えたボールは瞬く間に条善寺のコートへと叩きつけられた
変人コンビ、今日絶好調だな
そして、この攻略は相手を焦らせる
「照島ナイサー!!一気に獲るぜェー!!」
「オーライ!」
「こんニャロッ」
見事、条善寺のミスを誘い出した
これで17-11
リードしたままで順調に点を稼げている
そんな展開に、堪らないといった様子で条善寺はタイムアウトを要求してきた
「大地さん、ナイスです」
「おう?ありがとな」
バスケ部の主将と昼御飯争奪戦の話はまた聞かせてもらおう
そろそろスクイズを回収しよう。と目当ての人物達がいた場所へと視線を送ったのだが
「あれ?龍と夕どこ消えた」
さっきまで水分補給してなかった?
「「…潔子さん…」」
あ、いたけどなんて顔してるんだ
「「よく分かんないけど、俺らの事も叱って貰えませんか…出来れば見下すような」」
「しません」
「「じゃあー」」
「尻も叩きません」
なにやってるんだあのふたり……
潔子さんにお尻向けたりなんかして
「潔子さんにお尻叩いてもらおうだなんて…変態か貴様ら」
「「柚葵が!柚葵が!」」
今度はなぜか私の方を見て泣いてるけどほんとにどうしたこの二人
「「柚葵はお尻…柚葵はお尻派…」」
「……………」
だめだ
「孝支先輩、このふたり止めてもらってもいいですか」
「…田中?西谷?」
スンッと表情が戻ったふたりに今日は同情する余地はない
それと共にタイムアウト終了の合図が鳴った
「!」
「!2セット目半ばにして…こっからが"第2ラウンド"て感じかな?」
「さっきまでの焦りは期待できないのは確かだね」
タイムアウト後に待っていたのは、顔つきが変わった条善寺メンバー
それに比例するかのように攻撃パターンも変わった
「フェイントォッ!!」
先程までしていなかったフェイントに加えて
「ナイス!上がってる!」
「二岐!」
強打のツーで返されるモーション
けれどそれが分かってるならなら…と飛雄はブロックへ飛んだ
「ア"!?」
それは囮で後ろに控えていた1番くんに強打で打ち落とされた
「嫌だ…厄介……」
「完全に打ってくると思った…」
「ですよね…」
まさかツーで返されると思った瞬間モーションが変わり、セットアップされてバックアタックをかまされるとは思っても見なかった
確実にタイムアウト後から理性もついてきてる
「今お前が打つと思ってたわ!!ビビった!!」
「わはは!!」
見方も予想外なのは予想外だけど…!
「上がった!ラスト!」
理性がついても、条善寺お得意の凌ぐボールでの強打は健在であり
「どシャットオォ!!」
ツッキーの餌食になっていた
ん?何でこっち見てるんだ?
「止めるなら問題無いデース」
…ああ、なるほどね
さっき烏養くんがブロックせずにレシーブって言ったから…
ツッキーが意外と気にしてるなんて
可愛いとこもあるんだ
「オーライ」
さあ、翔ちゃんが前衛で飛び出した
条善寺は……
「うわ…理性がつくと厄介」
「条善寺のブロックが日向をノーマーク?」
「だけじゃないですね」
ほぼ皆がレシーブ体勢
条善寺はレシーブさえ上がればどんな体勢でも攻撃してくるタイプ
「オラァ!!!」
更に身体能力が高く、手で間に合わないレシーブを足でして見せると
「ホァーッ」
そのボールを綺麗に強打で決めてくる
「翔ちゃんをノーマークからカウンターは見事…というしかないですね」
「仕方がないか…日向のスパイクはまだ重さが足りなく軽いからな」
「そんな…!」
「でも先生、今までだとそこで終わりだが」
「進化した変人コンビは」
「「ひと味違う」」
「!」
「それにブロックにフル無視されるのは最強の囮にとって悔しいでしょうね…」
「じゃあ日向君は…」
「だからこそ翔ちゃんは勝負しますね。"見えてる"ので」
「?」
覚醒してる翔ちゃんはここで立ち止まらない
「も一本ナイッサー!」
「オーライ」
夕がレシーブしたボールは綺麗に飛雄へ
そのまま飛び出した翔ちゃんへと流れるようにトスを回した
「やはり日向君をノーマーク!」
ブロックがついていない景色はそれはそれは見やすいことだろう
翔ちゃんは相手コートの穴にしっかりとボールを叩きつけて見せた
「昔とは違うぜ?」
「見える翔ちゃんは強い」
「なるほど、日向君も個人の武器を身に付けているということですね」
「ああ、それも何よりも強力なもんをな」
その後は飛雄のサーブが入ったり入らなかったりとしたものの、リードは変わらずに23-19
「日向!も一発行け!」
翔ちゃんは穴を見つけそこへと打ち込んだ
「ふんっ」
「…至近距離でレシーブ…!」
ただ、取れないスペースの落ちる前で取られてしまった
そして、そのままの勢いで点もとられてしまった
「んぎいいい!次は勝ァツ!!」
おお……翔ちゃんが燃えてる
ところに大地さんが声をかけてる…何をいってるのかは聞こえないけど
「ナイスレシーブ!」
「行け日向!」
「来いやああぁあ」
連続翔ちゃんとは強気だな、飛雄
再び上がったトスに翔ちゃんが繰り出した攻撃は
「ん"なあああ!!!」
「ナイスフェイント!」
「…澤村がアドバイスしたな」
「ですね!大地さんがしてやったりな顔してますね」
「流石だな…やられた」
「そのお陰でマッチポイント」
「追い込んでくるなよ柚葵」
「はははーすみませーん」
でも、本当にこの一点が運命の分かれ道
翔ちゃんはサーブで後衛
攻撃パターンが絞られるこのターンでどうでるか
「日向ナイッサー!」
「オーライ!」
「まさか!シンクロ攻撃…!」
「気を付けろ!さっきとは違うぞ!」
打ち込まれるボールを見るより、条善寺の攻撃パターンに驚き成功させたシンクロ
「ーアウト」
「へ」
「アウトだよ……柚葵」
「田中・日向ナイスジャッジ…!」
綺麗なシンクロに思わず見入ってしまっていたから、アウトになってることに気がつくのが遅れてしまった
「アウト……?この瀬戸際でさえ楽しむことを優先した?勝敗より成功したときの快感を味わいたいってこと?恐ろしすぎる…条善寺」
試合に負けて勝負に勝つみたいな精神論…?
「っしゃああああ!!!」
「なんにせよ試合に勝ったんだ…分析するの好きだろうが祝福してやれよ」
「それは勿論」
勝ったことは嬉しいことだし
「これから強敵になることは間違いないから…ライバルがいっぱいいていいね、バレーボールって」
個々の強さが怖いんじゃない
チームでの強さが怖いんだ
勝ち負けが決まってる試合なんて無い
でも、なんとなく私なんて…と線を張ってしまうことも事実で
個人競技はそれも試される
勝つ、負けるなんて誰にもわからないことなのに格上だから…と負けると思ってしまうことも多々あるから、自分との勝負にも打ち勝たなきゃ行けないけど
団体競技はそこじゃない
一人が強くても勝てない
一人が強くても優勝しない
でも、例え一人が弱くても負ける訳じゃない
自分に無いところを有る味方でカバーしあってお互いがお互いを補っていく
それが団体競技の弱味であり強みでもある
そしてバレーボールにおいては一番"それ"を実感する競技だ
「あー…しんどい」
「っえ!柚葵!?」
「大丈夫ですか!?」
「大丈夫だ、こいつ今更バレーボールを知っただけだから」
「「え?」」
「…正確に言うと"楽しさ"ですからね」
「いや、全部だろ」
『ありがとうございましたー!!』
「すみません。終わった瞬間に申し訳ないのですが…私、先に行きます」
あれこれ聞かれる前にここから退散しよう
それと、見ておきたい試合がある
「潔子さん、これだけお願いします」
「あ、うん?」
「今行ったところで変わらんねんじゃねえか?」
「それでも、なにも見てないよりはいいでしょ?順調に勝ち進んで来たら厄介な相手な訳だし」
「…まあ、そうだな……頼んだ」
「了解しました」
挨拶の勅語に私だけ移動させてもらった
本来なら要るべきなのだろうけど、次の対戦相手の分析も私の役目だと思ってる
今は烏養君がいて要らない役目かもしれないけど、一年前からしていること
相手を分析することはテニスの時もしてたし、好きで得意なんだ
私は辞めたくないし辞めるつもりもない
今、選手でないからこそ私の唯一残すことができる爪痕だとも思う
自分で動かないけど、皆がそれを理解して解決していってくれるのが堪らなく嬉しい
何より相手の攻略方法が分かった時の快感が最高なのだ
「さて、少ししかないかもしれない貴重なラリーだ…」
応援席の2階に辿り着いたときにはもう2セット目の22-17だった

ーー……
「柚葵!」
「あ、龍に…大地さん」
「どうだった?」
「んー…一言で言うと」
「「?」」
2階に来た二人に印象を伝えるタイミングでピピーと試合終了の合図が鳴った
いままで見ていた試合である和久南がストレートで上がってきた
烏野の次の対戦相手は予想通りの和久南……
「ちょっとどころか結構厄介ですね」
「「え」」


「1日目お疲れ様でした!」
『したっ』
「明日は勝てば2連戦です。疲れを残さないようにしましょう!」
勝てば2連戦………和久南に勝ったとして次の対戦相手になりうるのは伊達工か
それとも徹くん率いる青葉城西…それとも全く別のところかもしれない
でも、先ずは目前の試合
「次の相手の和久南は今までの相手と違ってウチと同じく3年が残ってる。完成度の高いチームだ。それに……」
ちらりと私を見てくる烏養くんに言おうとしたことが分かった私はうなずいた
「柚葵から聞いた話だと、守備力と粘り強さは音駒に近い」
「ゲッ…」
「少ししか見てはないですけど、流石に音駒よりかはレシーブもブロックも劣りますけど…何より厄介な相手にはなりそうです」
大地さんと龍以外の視線が私にきてるのが分かる
「確かな事ですよ?私も音駒でなにもしてなかったわけじゃないですからね!?ちゃんと分析はさせてもらってましたから…!」
「いや、そこを気にしてる訳じゃねえと思うぞ」
「……?あ、厄介ってところですね?」
「うん、そこが気になるべ」
「…まだ分析は途中なので確実とは言えないんですけど、相手の主将には注意というか…前も烏養くんが言ってた選手なんですけど」
「中島くん…でしょうか?」
「はい。その選手の特にスパイク時に要注意です。今は細かいことが言えずそれだけしか……」
「分かった…後は明日に頼むぞ、柚葵」
「!」
大地さんに面と向かってお願いされるとなんだか気合いが入る
「頼りにしてる」
「俺も」
「俺も!」
ああ、やっぱり……爪痕残しててよかった
こう言ってもらえて必要とされる感じが今ではたまらない
「いつでも頼ってください。期待してください。それに答えれるよう私は頑張りますので、みなさんも期待に応えてくださいね?」
『!』
「柚葵さん…?期待って…」
「なんで先輩達と影山驚いてんだ?」
「柚葵がまさかそこまで言うなんて…」
「期待する、めっちゃする…」
「頼るよ?俺、柚葵頼るよ…?」
「ふふ、任せてくださいな」
ありがとう、ウシワカさん
あなたのお陰で皆と本当の和に入れた気がします
期待の裏には信頼がある
その先に何が待ってるのか分からないけど、私はもう重荷なんて思わない
「ほんっと!なにがどう、こうさせたんだか分からねえけど、柚葵に頼りっぱなしでもお前らが実行するんだ。それが結果に繋がる」
『はい!』
「とりあえず、攻撃が上手く決まんなくても短気起こすなよ?とくにハイテンション&単細胞組」
あ、飛雄は自分が含まれてることを自覚してない顔してる…
「大丈夫です。フォローしますよ」
大地さん、流石すぎて大丈夫だろうな

「ーよし、必ずーー明日も生き残る」
「烏野ファイ」
「オース!!!」





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