日常


私がタマムシスクールに入学してから三ヶ月が立った。
タマムシスクールは1年間ポケモンの知識を再確認したり、応用を学んだりする場所。毎年いろんな年代のトレーナーが入学し、自分の目指すものを極める者もいれば見直す者も居る。
私は後者だ。サトシとシゲルが出発した日に私もマサラタウンをバッチ集めの旅に出たが、セキエイ大会ではベスト32、シロガネ大会では予選敗退。次にサイユウ大会出場を目指すもバッチをあと一つ手に入れる事が出来なかった。そう、どんどん成績は落ちていったのだ。そこで私はこのタマムシスクールでポケモンの事も、自分の進むべき道を再確認する予定だ。
そう心に決めるも、なんてこの授業は眠いんだろう。私はうとうとし始めて、ついに眠りについてしまった。






ピーンポーンパーンポーン―


「ナマエっ…ナマエってば!いい加減起きて〜!!」


頭の中で甲高い声が響き目を覚ます。と目の前に少し怒った表情をしたハルカの姿あった。


「やっと起きた〜!もう、早く校買行かないと今一番人気のホットドックが売り切れちゃうんだから!いい加減授業中居眠りしすぎかも!」
「はぁーい…ごめんなさーい。」
「もう!補修になっても知らないわよ?はっ早く行かないと!!」


ハルカは私の手を引っ張り走りだした。はぁ、まだ寝たい、ホットドックの為だけに走りたくないよ。こんな事口に出せばグルメ好きな彼女から雷が下るだろう。
今、私の手をぐいぐい引っ張りながら全速力で走っている彼女の名はハルカ。ハルカは私の親友で、同じA組のいつも一緒の女の子の中の一人。もう一人の女の子、カスミはお姉さんに毎日お弁当を作ってもらっているから、教室で待っている。
私も誰かがお弁当を作ってくれればこんな毎日走るはめにはならないのになぁ。


「ふー…着いた着いた!」


ハルカは息を整える暇もなく、人ごみを押しのけ押しのけあっとゆうまにショーウインドーの前へ着いた。


「あー!最後の一つ!!ぜーったいゲットするかも!」


そう言って、ハルカは手を伸ばす。


「ホットドック、ゲットだぜ!」


しかし、そう叫んだのはハルカではなかった。この聞き慣れた声とキメ台詞。私の幼なじみであり、同じA組のサトシがホットドックを手にしている。
「サトシ!このホットドックは私が先に見つけたの!私に返してほしいかも!」
「嫌だよ!オレが先に見つけたんだ!ハルカはその隣の肉まん買えばいいだろ?」
「サトシが肉まん買ってほしいかも!」
「オレはホットドックが食べたいんだ!」


バチバチに睨み合う二人。私の存在はまるでないみたい。この二人の食い意地は本当に凄い。


「もう、サトシったらレディーファーストというものを覚えてほしいかも!ねぇ、ナマエ?」
「ナマエ‥!?」


サトシは目を見開きながら私を見た。私、最初からいたんですけどー。やっぱり私の存在なかったのね。


「もうっ!私は最初からいましたー!!」
「ああ、ごめんごめん!ほら、ホットドックやるから許してよ。」
「えー!?サトシったら私には絶対渡さなかったのに!ほーんとナマエには甘いんだから!」
「煩いなぁ!別に…悪いと思ったからやっただけだろ!」


ハルカはニヤニヤしながらサトシをつつき、サトシは顔を赤らめながら必死に否定している。私はそんな二人のやりとりを見てながら笑っていた。

「ほーんと分かりやすいなぁ、サァートシくんは。」


またまた聞き慣れた声がいきなり背後から聞こえ振り返ればやっぱりシゲル。
彼も私とサトシの幼なじみ。クラスは隣のB組だ。オーキド博士の孫で成績もルックスも抜群。ファンクラブまである。


「…シゲル!なんだよ毎回毎回!」
「また始まったかもー。」

サトシはとても険しい顔でシゲルを睨み、ハルカはやれやれといった表情で二人を見ていた。そう、二人の取っ組み合いは日常的なものなのだ。


「ああ、実に可哀相だ。君の想いは無念、ナマエちゃんはこのボクのものだからね。」
「ひゃっ!」


シゲルは自信満々に告げ、私を抱き寄せた。シゲルのものになった覚えはないんだけどね。いつもの事ながらも私は顔を赤らめる事を抑えられない。


「し、シゲル、離して?」


私はシゲルの腕から逃れようとするが、男性の力には敵わないようだ。


「シゲル!ナマエを離せ!嫌がってるだろ?」


サトシは先程よりさらに険しい顔になりながら近づいてきた。そして私を抱く腕を振りほどこうと手を伸ばした瞬間、シゲルは腕をほどく。


「照れ隠しだよね?ナマエちゃん。」


シゲルは私にニッコリ微笑んだ。よく恥じらいもなくそんな事言えるなあ。この扱いが冗談だと分かっていても、いつも私の心臓の音は鳴ってしまうんだ。


「いつも後ろに女の子連れてるようなチャラチャラした奴、ナマエは嫌よねー?」
「えーと、まぁ、そうかも!」
「応援してくれるレディ達を突き放す訳にはいかないだろ?まぁ、サートシくんはこんな気持ち、分からないだろうけどね。」
「っ!なんだと!?」


ピーンポーンパーンポーン―


結局お昼を食べれないまま、昼休み終了のチャイムがなってしまった。


「一先ず退散するよ。ボクがナマエちゃんと違うクラスだからって調子にのらないようにね、サートシくん。またね、ナマエちゃん。」
「ま、またね‥。」


シゲルは微笑み、去って行った。


「はぁー!ライバルー!!」
「はいはい、授業だから教室戻ろうね〜。」


と、ハルカの一言でみんなで教室に戻るのであった。

サトシがハルカいわく私に甘いというのはやはり幼なじみだからかな。10歳になって旅に出るまではシゲルも含め毎日一緒に遊んでいた位私達は仲が良かったから。
シゲルは恐らく、私に凄く優しくしてくれるサトシに私の事が好きなんだろうと勘違いしている。だからサトシにライバル意識があるため私に近づいてきて毎日二人の取っ組み合いが始まるの。勘違いで毎日喧嘩するのも止めたいところだけど、シゲルはなーんか口出しできない雰囲気を持っていて、私は口を挟めないでいる。
これが、日常。


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