初めての草むら



結局私はマリルを見つける事ができなかった。とりあえず研究所に戻ろう。もう誰かが見つけてるかもしれないし。
研究所のドアを開け奥に進むとウツギ博士しか居なかった。どうやら誰かと電話をしているようだ。とりあえず疲れたのでソファーに腰かける。しばらくすると電話が終わったようで、私の前の椅子に腰掛けた。


「ああ、ナマエちゃん。他の皆は?」
「まだ、みたいですね。マリル見つかるといいな…。」
「大丈夫だよ!あれだけの人が探しまくっているし、何よりマリルは相当ヒビキくんに懐いているからね。マリルが研究所を飛びだしたのも、ヒノアラシへの嫉妬だと思うんだ。」
「そうなんですか!?じゃぁ安心、かな…?」
「大丈夫さ。それで突然なんだけど、実はナマエちゃんに頼まれ事をして欲しいんだ。」
「はい!何ですか?」
「たった今ポケモンじいさんという人から電話がきてね、いつも珍しいものを見つけては大騒ぎする人なんだけど‥こんどこそ本物ですぞ!とか言われてね、それを取りにいってほしいんだ。」
「そ、そんな重要な事、私が引き受けちゃっていいんですか!?」
「ああ、もちろんだよ。僕も忙しいし、研究員もお手伝いのヒビキくんも今はマリル探しで大変だから、申し訳ないけど。出来るだけ早く取りに戻ってほしいんだ、いいかな?」
「はい、もちろんです!じゃぁ、行ってきますね!」


私は気合いを入れて出口に向かった。


「待ってナマエちゃん!場所は知っているのかい?」
「あ…!!」
「ははっ、少し落ちついて。ポケモンじいさんの家はヨシノシティを北へ行った所だよ。後、僕の番号を登録しといてね。」
「すみません。分かりました。ありがとうございます!」


私はポケギアを取り出して番号をなんとか登録した。まだ、慣れないな…。


「ふう、登録完了っと!じゃぁ今度こそ行ってきますね!」
「ありがとう、気をつけてね!」


お辞儀をして、研究所のドアを閉めた。私、こんなスタートで大丈夫なのかなぁ…。










29番道路突入。あっ!私もヒビキくんみたいにチコリータを連れ歩こう。そして、ちゃんと挨拶もしなきゃね。


「出て来てチコリータ!」
『チコ!』


チコリータは足に擦り寄って来た。可愛いやつめ。


「チコリータ!何かいろいろあって挨拶が遅れちゃったけど‥私はナマエ。一緒にチャンピオン目指そうね。」
『チコチコ!』


チコリータは凄い張り切っているみたい。それにしてもポケモン、人間の言葉が分かるなんて本当凄いなあ。私達人間もポケモンの言葉が分かればいいのに。なんて思いながら草むらに入らないように歩いていたけど、あっとゆう間に通らなくては前に進めないとこまで着いてしまった。

覚悟はしていたはずなのに、目の前にするとやっぱり怖い。入れない…生まれてから一回も入った事のない草むら。もし強い野性ポケモンが出て来てチコリータが瀕死になってしまったら、私正気でいられるかな?気付けば私は震えていて、一歩も進めなくなってしまって10分経過。‥20分経過。


『チコー!』
「痛っ!」


チコリータが私の背中を体当たりしたようだ。嘘…私、最初のパートナーにも飽きられちゃったのか。草むらに入れないなんて馬鹿みたい。こんな私がチャンピオンを目指してるなんて人々が聞いたら笑うだろうな。でも入れないし、チコリータには飽きられたし。もう駄目だ…涙が出て来そう、何で自分はこんな泣き虫なのかなぁ。一粒、涙が頬を伝った。


「ごめんね…チコリータ。」
『チコ!』


チコリータが私の頬を舐めた。慰めてくれてる…?と、思ったらまた私の背中を体当たりしてくる。どうせなら、正面に体当たりしていいよ。何で背中ばっかり。背中…背中!


「チコリータ‥もしかして背中を押してくれてるの?」
『チコ!』


チコリータは嬉しそうに頷いた。


「チコリーター!!」


私はチコリータを無意識にこれでもかって位に抱きしめた。が、チコリータが少し苦しそうにしたからすぐ我に帰って離した。
私ったらとんだ勘違いしちゃったな。そうだ!私にはチコリータが居る。野性ポケモンがでてもきっと大丈夫!
これからは今みたいに、私がチコリータに背中を押して貰うんじゃなくて、チコリータが私に頼れるような強くてたくましいトレーナーになりたい!私は強くそう思った。


「よし!行くよ、チコリータ!」
『チコ!』


私は生まれて始めての草むらを踏みだした。しばらく歩くと野性ポケモンがオタチが現れた。可愛い…じゃなくて!私とチコリータの初バトル開始!


「チコリータ、たいあたり!!」
『チコー!』




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