情熱ラブコール




 校庭の桜の木が黄色い。暖かい秋。暖かくはないか。少し肌寒い。うーん、これも違う。なんていうか、過ごしやすい気温。もう少ししたら肌寒い秋が来る。

 今はHR中。これが終われば帰れる…。今日は一日中テストで、もうくったくただ。早く帰って愛犬と遊びたい。ああ、我が子や。早く帰りたい。あのふわっふわのもふもふにタックルしたい。なで回したい。ギューしたい。

 テストの結果はいつも通りグダグダ。ははは、大丈夫。なんてったって立海は中学校から大学まで一貫なのだからー!!中学校に入ったからにはこっちのもんだ!!よかった。小学校のときは頭良くて。今?今は全然です。余裕かましてたら追いつかなくなりました。すべては数学と理科の所為。ううん。でも大丈夫。結果だけがテストのすべてじゃありません。そんなことを考えているうちにHRの終わりのチャイムがなって号令。よろよろと帰りの支度をして席を立ち、友達の元へ。


『芙美ー帰ろー!』

「ちさ日直でしょ?日誌書いた?黒板消した?」


 そうだった。毎日変わる日直は出席番号順。ああそっか。今日は私なのか。で、あと1人、男子のほうは誰だろ。日直は学校の中でもめんどくさい仕事だ。掃除と日直はすごくめんどくさい。


『じゃ、待ってて?』

「ごめん、彼氏と帰る約束した」


 この薄情者!親友より彼氏を選んだ芙美の彼氏を少しだけ恨んだ。まぁ、その彼氏と一緒にいるときの芙美の幸せな笑顔を見たら本気でなんて恨めない。


『…わかったー。また明日ね』

「うん、バイバーイ。気を付けて帰ってね」


 芙美のこういう、勝手に約束しちゃう(束縛じゃない!)ところには慣れっこ。だって小学校からの仲だから。立海に入って、1年では同じクラスになれなかったけど今年同じクラスになれて来年も同じクラスになれますよーにってサンタさん(先生)に願っているところだ。時々薄情者になってしまうけど優しくて頼れる芙美が私は大好きです。

 てかもう1人の男子の日直は誰だろう。別に2人でしなきゃできない仕事っていう訳ではないけど、私が損してあっちが得する感じがなんだか悔しい。負けた気がする。あー、芙美がいたら話して待ってたのに。早く来い男子日直!私は早く帰って愛犬、我が子にダイビングしたいの!考えて1人怒っていると前の扉が開いた。


「すまん、遅れた」


 …確かに君とは1年の時、去年同じクラスだったけどね。隣の席になったことも何度かあったし、クラス内の班決めでも同じ班になったこともあるけど。


『え?真田?クラス違うよね?どうしたの?』

「幸村に日直の仕事をしてこいと頼まれてな」

『…はぁ…』


 ああ、幸村にパシられたんだ。なんてかわいそうな真田(棒読み)。納得出来たようでできない私をほって「黒板は俺が消す」と消しだした。よかった。私だけじゃ絶対黒板消せなかった。いや幸村が来い。本当に真田が可哀想になってきた。


『さーなだー、教卓の上の日誌投げて』

「自分で取りに来い」

『じゃあラケットで打って』

「自分で取りに来い」


 真田のケチ。だから一部の人からお父さんとかパパとか呼ばれてるんだ。あ、なんか今嫌なこと思い出した。隣の席が真田だったとき、私のお弁当に嫌いなピーマンが入ってたから真田のお弁当箱の中に入れて…そしたら正座させられて怒られた。ピーマンくらい食べなさい。柳くんは食べてくれたよ。

 それにしても日誌って書くことがイマイチ分からない。今日の授業内容なんて私たちに聞かずにそれぞれの教科担当に聞けばいいのに。先生たちもめんどくさがりだよね。欠席者はなしで…、遅刻した人…真田。日直じゃないけど遅刻だもんね。


『ありがとパパ!…じゃなくて真田、助かったよー』

「パッ!?」

『今度はちゃんと幸村が日直の仕事するように言っておいてね』

「ふむ」

『じゃ、私は帰るね。バイバイ!』


 早く帰らないと!またお母さんに我が子の散歩行かれちゃう!私がペットショップで選んだ犬なのに!!って言っても私が小さい頃にペットショップ行って、適当に指さしたとか、冷めることお父さんに聞かされたな。


「待て、衣塔」

『ん?』

「幸村から伝言だ。放課後、テニスコートで待っていろと」


 …なんでですか。私は早く家に帰りたい。もうくったくただから。今日くらい癒されまくってもいいはずなのに。テストボロボロだからその傷を1匹の犬に埋めて貰ってもいいじゃないか。


『ごめーん真田パパン、無理』

「だが幸村に頼まれてだな、」

『どうしてもはずせない用事があって、』

「幸村がどうしてもと、」

『バイバーイ!パパー!バーバパパー!』

「む。仕方がないな…」


 あのテニス部だ。もうホストクラブですかここは?と目を疑うようなテニス部だ。美形ぞろいのテニス部の部長になったお方にお呼ばれするなんて絶対恐ろしい。幸村からの呼び出しじゃなかったら素直に「あ、いいよ!」とか言っているかもしれない。いや、そうでもないかな。まぁ、どっちにしろあの幸村だから何をしでかすか分からない。仕方がないと言ったパ…真田を無視して廊下に出て全力疾走した。ごめんねっ…アナタの真面目さ、幸村への忠実さに乾杯!!

 廊下に出た瞬間、窓が全開になっているところがあって、冷たい風にほっぺたが切り刻まれそうだった。前髪がバッサーってなったけど、気にせず走る。眉毛はお手入れ済みだ。後ろから私を呼ぶ声がして振り返ったら、すぐそこまで真田が来ていた。うわ、さすが運動部。だけど捕まる訳には…、


「丸井、仁王、赤也!」

「「「イエッサー!」」」

『え、えぇぇぇえ!?』


 階段の影から例のテニス部、色とりどりな頭が飛び出てきてぶつかる。

 捕まった…!すごいなテニス部。てかすごいねー幸村。どんなこと話されるんだろう。お金貸してとかだったら殴ろ。…殴れないー。


(2011/04/04)



siorimokuzi



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