ダメもう無理帰りたい。過ごしやすい気温なんて思ったけどそれは程遠い。寒い寒い寒い。これが冬になったらどうなるんだろ。

 つい先ほど色とりどりの頭と帽子に捕まって腕捕まれてずるずるとひきずられてやってきたテニスコート、のフェンスの前に私はいる。青のような緑のような曖昧な色。フェンスの錆びた匂いがひとりでいる寂しさをツンと引き立てた。キャーキャーな女の子たちもほとんど帰って、薄暗い中、私だけ。それにしても幸村遅いな〜。女の子達が帰ったってことはテニス部の部活も終わったんだろうに。レディーを待たせるとは…全く…けしからん!


「やぁ、衣塔」

『…幸村』


 薄暗い闇にも目が慣れて、制服に着替えた幸村が目の前に。早く話しを済ませて、帰ってゴロゴロしてー…我が子!きっと幸村の用件は日直のことだ。えー。日直のことで長時間待たせないでよ。お金貸してとかだったら殴ってやる。もちろん頭の中で。

 幸村だけかと思っていたらぞろぞろと、テニス部の皆様登場。あ!カラフル頭!今思い出しても恐ろしい。女の子を廊下でひきずるなんて。私お嫁に行けない。


「カラフル頭ってなんだよ」

「前にテニス部のこと話したよね」

『うん』


 正確には話されたんですけどね。寝ようと思ってたのに無理矢理話されて聞かされたんだけど。あああ。とりあえず寒い。帰りたいよお母さん〜!


「まぁ、こんなことろでなんだからファミレス行かない?」

『え、なんで。いいよここで』

「いやだ」

『え、いやだじゃなくて』

「行くよね?」

『私、犬の散歩に行かないと、』

「いけ、3バカ」

「「「イエッサー!」」」

『いや、イエッサーじゃないし!うわ!』


 今さっきのカラフル頭たちに腕を捕まれて連行。あれ?デジャヴ?


「よ!ちさ」

「久しぶりだな」

『ブンちゃん、ジャッカル!お久』


 カラフル頭3バカのうちの1人はブンちゃんだった。あの廊下で行われた悲惨な事件は早すぎて、ブンちゃんだってわからなかった。もう1人はジャッカル。ジャッカルは本当にいい人。ジャッカルの80%は優しさでできてると思う。ブンちゃんとジャッカルは小学校が同じだったから仲がいい方なんじゃないかな?少なくとも私はそう思ってる!


「図書室以来だな」

『あ、柳くん』


 柳くんは図書室でよく会う。私が届かないところの本を取ってくれたことも何度か。1年のとき同じクラスだった。そして私のピーマン係。


「幸村部長、この人がふぁご、」

「赤也ってばおっちょこちょいだなー」


 幸村とブンちゃんと、ジャッカルと柳くん、真田意外はお初。いや、あれだけ有名だから顔と名前くらい一致するけど話したことはない…気が、する。


「俺、1年の切原赤也っス!」


 1年!かわいいな〜目大きいな〜もふもふしたいな〜!我が子と同じ雰囲気がする!いいな、こんなかわいい後輩。私も部活入れば…、


「さ、走ろっか!」

「「イエーイ!」」

『イエーイ!…助けて柳くんこれ誘拐だよ!』

「誘拐じゃない。強制連行だ」


 私バカだから同じ意味だとしか思えないよ!いや、本当に行っちゃうんだろうか私は。痛い痛い痛いローファー削れる!ブンちゃんに痛いと訴えたけど、腹減ったーとしか言わない。この、人間ブラックホール!


「腹減った〜ファミレスが歩いて来いよ〜」

「ブンちゃんニート」

「働いたら負けだと思ってる思考」

「誰かドリンクバーの券持ってない?」


 ブンちゃんと仁王くん、切原くんの会話がおもしろくて引きずられながらも思わず笑ってしまっていた。幸村!私ドリンクバーの券3枚持ってる!そう言うと幸村に頭をガシガシされた。自分が喋りたいことを話して、笑って、本当に楽しそうにしているテニス部の人たち8人を見ていたら部活に入っていることを羨ましく思ってしまった。高校生になったら部活入ってみようかなー…調理とか家庭科とかあるかな?


(2011/10/03)



siorimokuzi



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