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『貴方の…名前は?』
「天海です。こう見えても僧なんですよ」
『そうなんですか!?』
びっくりした様子の彼女を見て私はクスリと笑った
「今は…そうですね」
見た限り本当に記憶を無くしてるようで、ふんわりとした雰囲気の羅唯を見てまたクスリと笑った。
『よく笑う方ですね』
クスクスと彼女も笑いまた。つられてまたクスリと笑みが零れた。
「初めて言われましたよそんな事…」
私は遠くから気配を感じて彼女から少しずつ遠ざかった。
「私はこれで…」
『また…お会いできるといいですね』
「またお会いできますよ…必ず、ね」
私は微笑みながらその場から立ち去った。
*
『…私も帰ろう』
見とれていたけれど気付けば綺麗な花畑が血で染まっている。
足を早めてその場から離れた時だった。
「……羅唯」
『あ!佐助っ!』
「“あ!佐助!”じゃないでしょ」
やっぱり少し佐助は怒った様子だった。
貴方に…優しい嘘を
(言えば良かったですね…賊に襲われたなど嘘)
(心を穏やかにする為にただ切り刻んでいただけの事…)
(貴方のせいで虫の居所が悪いのです…っと)
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