死神 | ナノ


其れがたる所以  


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「ぬあっ!!!」


変な声が出た。
それは部屋にいたグリムジョーとノイトラ、テスラ、ザエルアポロにも聞こえていたみたいで総じて視線が向けられる。
いや、もはや注目を浴びているのは問題じゃない。

今日は現世がクリスマス。
ということで皆でケーキを作ろうと昼間のうちにスポンジだけ焼いて冷ましてあった。飾り付けだけなら料理が得意じゃない皆でも楽しめるだろうと思ったのに。


「どうした?」と、ノイトラ。


「すんません…皆さんに謝らなければならないことが……」
「だから、どうしたとノイトラ様が聞いているだろう。さっさと答えろ」


諸悪の根源である紙パックを差し出す。


「生クリームを買ってきたつもりが……飲むヨーグルトでした……!」
「「「なんでだよ」」」


どうやって間違えたらそうなるんだ。とグリムジョーが笑う。ええ、その通りですとも。


「言い訳をさせてもらえるなら、クリスマスと年末が近いせいで現世のスーパーが激混みだったもんでじっくり見てる時間がなく…」
「へー」
「ちょっとグリムジョー。何ちゃっかりヨーグルト飲んでんのさ」
「あるなら飲むだろ」
「くっ…ごもっとも! 仕方ない。買いに行ってくるか。皆ちょっと待ってて。すぐ戻ってくる」
「僕も行く。その買い物に付き合ったけどあまり猶予がなかったし、アラシがいないと不安になるからね」


ザエルアポロはまだ超人薬のトラウマがあるみたいで、薬を薄めるのに一役かった私を信頼してくれている。
私はパンッと手を叩いて喜んだ。


「ありがとー! ザエルアポロ! あのね! クリスマス当日のスーパーって家族とカップルがたっくさんいるの! ひとりだと肩身が狭いんだー! 助かる!」
「いつも助けてもらっているからね」
「じゃあ俺も行く。待ってんの暇」
「ノイトラ様が行かれるというのならば、もちろん僕もお供します」


口々に言いながら上着を羽織る面々。
さあ行こうと部屋のドアを開けたとき、ふと皆が振り返る。
パックごと口に運んでヨーグルトを飲んでいたグリムジョーがぴくりと体を止めた。
「なんだよ」
皆の視線を一挙に受け止めて、顔をしかめている。
とりあえず訊いてみた。


「あれ? グリムジョーは行かないの?」
「はあ?」
「皆、行くってよ。ひとりになっちゃうけど、どうする? 待ってる?」
「現世はさみーから嫌だ」
「あー、そうだね。雪も降ってるかもね。じゃあすぐ戻ってくるから待っててね」


けど、珍しくノイトラが食い下がった。
「本当にいいのか?」
「別にいい」
「へえ?」
「何だよ、ザエルアポロもノイトラも哀れむような目を向けてくんじゃねえよ」
「ま、行かないと言うのなら仕方がない。ノイトラ様、行きましょう」


ほれほれ、とテスラが皆の背中を押して部屋を後にする。
廊下を数メートル歩くと、ばぁーーん! と後方で扉が勢いよく開いた。しっかりレザージャケットを着たグリムジョーが思いっきり不服そうな顔でのっしのっしと歩いてくる。
何も言わずに最後尾に付いた。

ぼそっとザエルアポロが呟く。


「最初から素直になればいいのに」
「ああ!? うるせえ変態ピンク野郎!!」
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