死神 | ナノ


其れがたる所以  


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「ほらね?」


私が言うと、四人はぽっかーんと口を開けた。
目の前にある食品売り場は人人人人。
家族連れ、カップルのオンパレード。サンタクロースの衣装を着た店員さんが最後に売っちまうぞと情熱を燃やして大声で宣伝をしている。蠢く人波とその活気に四人は呆気に取られたらしかった。
まあ、幸い買うものは生クリームだけなのでそんなに辟易する必要もない。あらかじめ買いそろえておいたのは僥倖といえるだろう。


「そんじゃあっちに――っておい! グリムジョーはどこ行った!?」
「チキンの試食に行った。ほら」


と、ザエルアポロが指差す方向を見れば主婦と子供に混ざってフライドチキンをもりもり食ってるデカイ男がいる。


「あの野郎、一番乗り気じゃなかったくせに最初に輪を乱すとはどういうつもり――」
「辛い肉もあるぞ」
「どれだ」


グリムジョーが手を挙げて言うと、辛い物好きのノイトラがそそくさと行ってしまう。とすればテスラも付いていくわけで。


「ちょいちょい! 私らの目的は生クリーム!」
「今から半額になるんだとよ」
「ふざ――! 買おうか。辛いのと普通のと五本ずつください」


パックに詰められたチキンをカゴに入れてほくほくしていると、ザエルアポロのすごく冷静な表情を見て当初の目的を思い出す。


「はっ! 生クリーム!」
「あ。俺ラムネ飲みてえんだった」
「俺、日本酒。辛口が飲みてえ」
「あ、僕も何かお酒。喉が炭酸を欲している」
「おい、そこの三兄弟! この人混みのなか勝手に動くんじゃ――」
「おいアラシ、シャンパン1000円だぞ!」
「だからテスラ! え? 買おう。何だそれお得すぎる。スーパーの利益は大丈夫なのか疑うレベルだわ」


またもや安くていいお酒を手に入れたので満足、満足。
ふう、と通路に戻るとザエルアポロがきょとんとしているので「はっっ!」の繰り返し。

その後も何かしら三兄弟がお得な商品と自分が欲しいものをカゴにぶっ込むので、あっという間に商品は膨れ上がった。

いざ会計をして虚圏に戻ってくる。

各々お酒を飲みながら、つまみを食べたりして、ふと気付く。


「生クリーム!」


すっかり忘れていた。
ついクリスマス商戦に踊らされてしまったが生クリームがないんじゃケーキはただのスポンジに果物だけになってしまう。

またスーパーに行かなければ。
いや、もはやコンビニでいいんじゃないか。そんなことを考えながら悶々としていると。


「これでいいのだろう?」


そう言ってザエルアポロがビニール袋から取り出したのは、パックの生クリームだった。

私は口をあんぐりとして、指差したまま固まってしまう。
かろうじて、「な、なななんで」と言えた。


「四人を見ていたら忘れるかもしれないと考えて、途中でカゴに入れておいた」


涙が出たね。
三兄弟を束ねる父親登場。


「ザエルアポロ…神!」


そんなやりとりをしてるというのに三兄弟は酒を食らっております。この野郎。
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