「ぎくり」とする。
彼女の息が詰まるのを頬で感じて、どうしようもなく、ぎくりとした。
最初は、きっと恐れなんだと。彼女を壊してしまうかも知れないという恐れなのだと思った。が。
頬に触れて彼女の体温を感じた時、これは興奮の一種なのだとやっと理解した。

ふるりと震えた瞼の向こう。薄く涙を纏った瞳に、自分が映る。
こんな時に自分がどんな顔をしてるかなんて知りたかなかったけど、
それでも彼女の眼は見たかった。



「…いい加減恥ずかしいかも」



弱々しく呟いた彼女に、思わず「わりい」と謝ったけど。ちっとも罪の意識なんて無い。
もっと。とか。恥ずかしいこと言いそうになる。
頬に触れていた手でグシャリと柔らかい髪をかき回して、頭を掴まえる。
絶対逃げやしねえだろうなって確信はあったけど。逃がさないって気分。




「…それ、ずるい。」
「…あ?」



彼女が指した「それ」が分からなくて、間抜けな声が漏れる。
伺っていたら、ふっと視界が明るくなった。
彼女の手にはサングラス。なるほど、「それ」って「それ」か。
言われてみれば、なんか恥ずかしくなってきたかもしれない。
視界を狭めるために、敢えてさらに彼女に寄った。
額がぶつかる。ふふ、と小さく笑われた。なんだか自分がガキ臭く思えてきて、マトモに目が見れなくなってきた。




「で、まだ?」
「…うっせ。」



だいたい、お前が目閉じねえのがそもそもおかしいんじゃねえのか。
それが合図みたいなもんじゃねえの、と心のなかで焦りたっぷりに愚痴る。
言うべきなんだろうか、どうなんだろうか、迷い始めた時には

もう唇が触れていた。

やっぱりぎくっとして、潰れた面目とか、折れたプライドとかいろいろ感じたけど、
もう仕様がないから手にほんの少し力を込めて、唇に噛み付いた。




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