「なるほど」



興味があった。数多の攻性防壁や防壁迷路を組んできた彼女の頭のなかに。
だから覗いてみた。彼女は目を伏せて気まずそうに笑う。



「ご期待に沿えましたか」
「どうかしら。まあ、面白いものは見えたわ。」



確かに気まずくなるかもしれない。恥ずかしくなるかもしれない。彼女から見て私は大人だから。
有り体に言えば。彼女の頭のなかは青かった。あらゆる意味で。
彼女はものを知らない方だ。だが、基本的に考える体質らしい。
おそらくそういう性格なのだろう。フィルタが厚い。沢山の情報を掻き分けるのに慣れていても、
インプットされた情報は少ない。その少ない情報を、組んでは壊し、組んでは壊して、沢山のアウトプットをしていた。
その年の人間らしい、青い思考の堂々巡りだ。



「でも『ココ』は、誰しもが立ち入ろうとして、誰しもが歩みを止めた場所でしょう。どんな防壁迷路よりも、質が悪いと思わない?」
「…その通りね。」



言ってみれば私は彼女とは対照的で、頭のなかに沢山のものを置く人間だった。
ごちゃごちゃとした頭のなかで、気まぐれと直感でものを組み上げる。
もしかしたら彼女の分厚いフィルタを外すことが出来たら、化けるかもしれないわね。
ほんの少し怖くなって笑った。ほら、彼女と私はこんなに違うのにね。



「素子さん?」
「なんでもないわ。ねえ。スズの組んだ防壁迷路、興味あるわ。ダイブしてみていい?」



またなんとも苦虫を噛み潰したような顔をするけれど。彼女は拒否はしなかった。
スズが組む防壁は、彼女自身の精神が反映される傾向にあると聞いていた。
これは自らを守る為に隠したい気持ちと「知って欲しい」という欲求の間で、
板挟みになってると思ってもいいのかしら。のぼせ上がった自分の思考に何とも言えない気分になる。



「…いいよ。素子さん明日オフでしたっけ?…レベル下げてモニタリングしとけば大丈夫かな。」
「舐められたものね。レベルは下げなくていいわ。訓練だと思えば。付き合ってもらえる?」



左手の腕時計をなぞる。
明日がオフだってオフじゃなくたって、すぐに終わらせてやるつもりで。驕りじゃなくて自信。
挑発的に笑って彼女の視線を掴まえる。好奇心は猫をも殺すのか。
きっと電脳なんてものがなかった昔じゃ考えられないような、異様で乱暴な方法で私は彼女を暴いていっている。
私は楽しいし喜びを感じているけれど。貴女はどうなんでしょうね。


「喜んで。」ほんの少しだけ困ったように、彼女も口元を緩めた。





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