それは一つのキセキ | ナノ

宣戦布告(赤司)


はー…。
大輝に言い過ぎたかな。
本当はあんなことを言うつもりじゃなかったのに


「葉月そんなところにたっていると邪魔だ」
「……キャプテン」

「なにをそんなに泣きそうな顔をしているんだ、葉月は」


キャプテンは私の今の顔をみてそんなことを言う


「あはは、泣きそうな顔なんてしてないよ」
「葉月のことを一番知っているのは誰だと思っているんだ」


キャプテンは私の頬に手を添え、私の目をまっすぐ見た


「あはは、そうかもね。」
「久しぶりに会ったんだ泣きそうな顔なんて見せるな、笑っていろ……なんだその変な顔は」


笑っていろなんてキャプテンが言うようになるなんてなー。


「変な顔とかいわないでよ。キャプテンが私に笑っていろなんていうのが悪いんだから」
「そんなに意外でもないだろう、中学時代から僕は葉月にだけはやさしくしていた自信があるけど?」
「そうかな?キャプテンは結構恐かったけど…?」


一年…か、一年ってやっぱり大きいなー。みんな変わっちゃったなー。
キャプテンとはなんだかんだいって連絡を取り合ってきていたし、変わってないって思っていたけど、会ってみると全然ちがうな。


「それで、みんなに会ってきたのか?」
「あ、うん。てっちゃん以外にはしっかりと宣戦布告してきたよ!」
「宣戦布告か…」
「うん。キセキの世代を倒してみようかなー、なんて?」
「だとしたら葉月は僕も倒してくれるのかい?」


あー、この顔だ。私がずっと隣で見てきた顔は。チームが勝てば勝つほど余裕がなくなっていって寂しそうな顔をするキャプテン。
そんなキャプテンをずっと隣で見てきたから、変えれたら…って思っていた。
でも変わるはずがない。キャプテンが負けるはずなんてないのだから…。でもその問いは、私に倒して欲しいということなの?でも、私があなたを倒したらあなたは壊れるんじゃないの?

頭の中で回る思考はどれも言葉になることはなく、ただ私の口から小さく「がんばるね」と発せられただけだった。


それをきいたキャプテンもまた私の考えを理解してくれたからだろうか、私の頭に手をのせた


「明日からの試合も見に来るのか?」

「明日からの試合帝中の人出ないし、見ないかなー」
「大輝も敦も僕もまだ残っているけど…?」

「敦はキャプテンと試合はしないし、大輝も怪我したから無理。帝中の人が出てなかったらキャプテンも試合に出ないでしょ?」
「そうなるかもね」
「だから、明日は…会えない……かな。」
「そうか」


キャプテンの方を見ずに言ったからキャプテンがどんな顔をしているか私には想像もつかなかった


「次は冬だね」
「そうだな」


本当はキャプテンと離れたくない。言いたいことだって沢山あるのに


「あっという間だよね、冬なんて」
「ああ」
「……またね」
「ああ、また冬会おう」


キャプテンにとって私と会ったことなんて大したことではないんだろうなー
私はキャプテンに背を向け足を進めた
あー寂しいな。冬かー…。










「葉月」


進み出した私の体は後ろから伸ばされた手によって止められた




「今日、お前に会えて僕はそれなりに嬉しい。顔に出せたかどうかは微妙だけどな」




いきなりそんなことを言うので振り返ろうとしたが「こっちを見ようとするな、黙って聞いてろ」と言われ遮られた




「お前に頼りすぎ、つらいことをさせたと分かっている」




私の腕を掴んでいたキャプテンの手は私を抱え込んだ




「だから、僕にできることはする。何かあったらすぐに頼ってくれ」




まわされた手は先程よりも強くなった




「信頼しているからな、誰よりも」




耳元で紡がれる言葉で顔に熱が溜まる




「冬なんてすぐだ。なんなら会いに行く」




左手は回されたまま右手は私の髪に触る







「だから、笑顔でいてくれ」







触っていた髪の毛にキャプテンの唇が触れ、驚き振り返ったときにはキャプテンはいなくなっていた















(あー…キャプテンってずるい)


prev / next
[ top ]

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -