2,高尾和成という男

 入学してから数日たち、それなりに友達は増えた。周りの人たちは部活に入るか入らないかまだ悩んでいるみたいだった。
 ここ秀徳高校は県内でもかなり優秀な学校である。勉学で入学してきたものは皆、それなりにいい大学に入ろうという意思があるだろう。そうなると部活動に入ることが強制ではないこの高校ではわざわざ勉強時間を削ってまでして部活動に入ればいいのか悩んでいるみたいであった。もちろん中学時代に熱中していた人たちは即答で高校でもつづけると言っていた。さすが青春。青春万歳。
 緑間もバスケ部に毎日勤しんでいるみたいであった。授業が終わるとすぐに教室から出ていく。それを「真ちゃん!ちょっと置いてかないで!一緒に行こうよ!」なんて追いかけていく。これが知らない間にクラス内での名物になった。変人緑間真太郎を追いかける高尾和成なんて。



「そういえば弥生ちゃんって緑間君と同じ中学校だったんでしょ?中学の時もああいう感じだったの?緑間君って」
「緑間か?そうだな。あんな感じ。」
「緑間君って変わっているよね?」
「ん?そうだなー、普通とはずれているとは思うけど、別に私は何とも思わないかなー。あいついいやつだし。それにあいつの言葉で言うならあれは人事を尽くしている結果なのだよ、なーんてね」

 そういった私の発言に「すごーい似てるー!」なんて笑いあっている女の子たちとの会話に「へー真ちゃんと仲良しだったの?」なんて普段は聞かない低い声が混じった。

「うお!びっくりした、突然現れるなよ」
「あーごめんごめん。金城さんさー自己紹介の時も真ちゃんいじっていたけど、仲良しなの?」
「今仲良しかは知らないが一時期は仲良しだったと思うけど」
「本当に!?じゃあさ、金城さんバスケ部マネージャーしてくんない!?」

 なんて教室大きな声で手を合わせ頭を下げてきたのが高尾との出会い。今まで交流もなけりゃ話したこともなかったのにそんなことを言ってきたのだ。それなりに注目を集めるように。もちろんその声は緑間にも聞こえていたみたいで、こちらに向かってきた。

「何を勝手なことを言っているのだよ、高尾」
「勝手なことって、これも真ちゃんのことを思ってオレはー」
「何がオレのことを思ってなのだよ!!」

 なんて私のことを無視して会話を二人は始めた。何言ってんだこいつらは。

「だって真ちゃんのことオレだって部活中ずっと見れるわけじゃないし、先輩や先生だって真ちゃんのこと扱いづらいって言ってんだから少しでも仲のいい金城さんがやってくれたら楽だなーって」
「何を言っているのかはよくわかりませんが丁重にお断りしますね」

 高尾君はこのままじゃ勝手に話を進めるだろうから先に断わっておく。そういえばこの断り方は緑間の苦手な彼そのものだった気がする。反射的になのかは知らないが緑間は一瞬嫌な顔をした。

「えー金城さん、何か部活入るわけじゃないんでしょ!お願い!真ちゃんを助ける、いやオレをっていうか秀徳バスケ部を助けると思ってさ!ね?ね?」
「だから、オレを置いて話を進めるなと!」
「もう真ちゃんは黙ってて!だめ?」
「だめっていうか、」

 できればバスケ部には関わりたくないっていうか…。なんてことが高尾君に通じるわけもなく。でも何かいろんなことを察した緑間が「金城が困っているだろ。あまり困らせるな」なんてやさしい言葉もかけてくれた。ああ、なんか私の知っている昔の緑間だ。なんて少し感動したのは内緒。

「んー!!じゃあさ、今日だけ!今日部活に一回だけ顔出してみて!お願い!それだけでいいから」

 なんて譲歩案を出してくる。今日の放課後に予定のない私は、まあ見に行くだけならとその案に乗ったのだ。


[ 2/2 ]

|→



戻る


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -