1,初日

 名門、秀徳高校。私は春からこの高校に入学することになった。別に高校に入って頑張りたいことだとか中学時代に頑張ったこととかがなかったから、それなりにできた勉強で普通に受験をして普通に合格しただけ。
 中学の友人の頭の黄色い奴や青い奴には驚かれるかもしれないな。私が秀徳高校を受験したなんて伝えたら。あいつらとはもう半年以上連絡を取っていない。一時期は毎日会っていたのに。でもそれにも並々ならぬ理由とかがあるのだが。そうはいっても寂しいのは寂しいわけで。かといって自分には特にこれといって彼らの友情を復活させるほど彼らのすべてを知っているわけではなかった。それが少し歯がゆくもあった。カラフルな頭の友人の中の赤い髪の男にはできればもう会いたくないけれど。彼だけは個人的にいろいろなごたつきがあったせいで、例え元通りみんな仲良しに戻ったとしても彼とだけは元通りは無理だ。


 教室について自分の席に座ってぼーっとする。特に何か変わったところなんてないありふれた景色。一か月前まで見ていた景色とは特に相違点はなかった。あるとしたら、すこしだけこの教室のほうが古いというところか。名門というだけあって歴史も古い。最近は耐震だなんだと建て替える学校が多いがまだここ秀徳高校では行われてないみたいだった。

 教室内もしゃべっている人は少なかった。同じ中学の人がいないとなかなか話すことはないだろう。私も別に同じ中学から受けた人がいないわけではない。合格発表のときは一応自分の周りの人の番号がなくなっていないか確認もした。何人かは落ちていたがほとんどの人は合格していた。あえて話しかけに行く元気はないけれど。

 何の目標もなくただこんなところに来てしまった私には、頑張って秀徳高校に合格してそうしてこの教室にいる人たちとは住む世界が違うように感じた。

 ただただ時が流れてぼーっとして、先生が「自己紹介でもしようか」なんて言うまで本当に何も考えていなかった。

 起立して、後ろを振り返ってびっくりした。なんでこいつがこんなところにいるんだ。

「みど、りま……」

 周りの誰かに私の動揺なんて伝わるわけもなかった。どうしてこんなところに緑の髪の君がいる。お前受験の時にいなかっただろ。って、ああそうかバスケ受験かなるほど察した任せろこんにゃろ。なんて頭の中で一瞬、考えてもう何でもいいやってなった私の自己紹介。
「金城弥生です!そこにいる緑髪の人と同じ帝光中学校から来ました!よろしくお願いしまっす!気軽に弥生って呼んでください!」

 なんて元気にあいさつしてしまったのだ。ちなみに私のあいさつに自分の名前が出た瞬間、緑間が心底嫌そうな顔をしたのを私は絶対に忘れないし絶対に許さないと決めた。なんだよ一時は仲良しこよしにランデブーしたじゃないか!水くさいな!

 まあ、特にあとは何もなかった。そんな一日。あったとすれば緑間が自己紹介で「なのだよ」って言った瞬間に笑い声が聞こえてそれが心底不愉快だと思ったくらいだ。あとは自己紹介の軽い感じから何人かの奴に話しかけられたくらいだな。それらも適当にあしらってそれで終わり。

 そんな高校生活初日だった。

 何かにまた熱中してまた泣くなんてそんなことをもう一回するなんてその頃の私は考えたりしなかった。


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